悠太郎は火星人の襲来のパニックが気に入ったらしい。


「でも実際、こんなパニック起きるのかよ」


「実際起きたみたいですよ。それもかなりの規模で、このことについて他にも心理学の本も書かれてますし、それに当時はテレビもインターネットも無くて、ラジヲが全てだったんです。それが普通ニュースみたいに放送すれば、みんな信じてしまいますよ」


 悠太郎に訊かれて、花子は一生懸命応えようとして、早口にまくしたててしまった。後半あたりは鼻で返事されて、流されてしまった。もう、空回りして、恥ずかしい。


「……そっか。だったら、ひょっとしてこれ、学校ならできるんじゃね?」


「え?」


「ほら、授業中って、一応ケータイとかマナーにしろってうるさいだろ? 俺はそのまんまだけど、それでシーンってなってる中で校内放送でゾンビ発生って一声流れたら、それなら俺でも信じるぜ。それにパニックとか、お祭りみたいで楽しそうじゃん。それにここに書いてあるやつ、ちょっとやってみたくない?」


「それは、どうなんでしょう」


 急にふられて、花子は嬉しいやら恥ずかしいやらでどう返したらいいかよくわからない。せっかく会話のキャッチボールが出来そうなのに、もどかしい。


 悠太郎はまた何かを考えてる表情に変わった。


 あぁ、人の頭も本のように読めたらいいのに、と花子は切に思う。読めたら、もっと上手く返せるのに…………。


「…………このカーニバルのペテン、文化祭でできないかなー」


 前言撤回、花子には男の子の頭の中身は読めても理解できそうになかった。


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