1月29日

 シャワーを浴びながら思い出していた。

 昨日の晩、彼が独りで考えていた事。

 成る程な、と思った。

 いつもの私なら、「根暗なBらしいなぁ。確かに女々しい想像だし、馬鹿馬鹿しい仮定だし、つまらない妄想だし、下らない戯言だと思う。そんなこと考えてても、もしそうなった時はそうなった時だよ。私たちに出来ることが有るかもしれないし、無いかもしれない。そうなった時はその時に考えよう」そう思っただろう。

 いや、そう思ってる。彼が予想した通りだ。ズバリ的中している。

 しかし一方で、「そうなったら嫌だな。もしもそうなったらどうしよう。そんなことにならないでほしい。そんなの受け入れられない」そう思う私がいる。

 きっと、彼が居なくなることが、私にとって非現実ではなくなってしまったからだ。

 私自身が『独り』を経験してしまったからだ。

 そこに幸福なんて勿論無かった。

 不幸の訪れを、身を以て感じた。

 絶望という言葉の意味を知った。

 孤独の辛さを、覚えてしまった。

 もう楽観視なんて私には出来ない。

 本当にいつかその時が来てしまったら、私は一体どんな行動を取るだろう。

 孤独に堪えきれず、いつ帰るか分からないBの後を追ってしまうだろうか。

 それとも、いつかその孤独が風化してしまうまで独りで堪えるのだろうか。

 独りに堪えれなくなって誰かに温もりを求めBを忘れようとするだろうか。

 もう、冗談なんて私にも思えない。


 私たちはこれからずっとこの恐怖を抱えて生きていくのか。



 ハンドルを回しシャワーを止める。

 身体はいい感じに温まって、肌に張り付く濡れた髪の毛さえ鬱陶しくない。

 身体をバスタオルで覆い水滴を吸わせる。

 ふわふわに仕上がったタオルの肌触りが気持ちいい。

 サッパリした。

 心は暗澹あんたんとしている。

 別に泣いたりなんてしないけれど。

 今にも身体は崩れてしまいそう。


 また、Bに手紙を書くか。

『思考の共有』が出来るようになった私たちだけれど、一語一句らさずに伝えるならやはり手紙が一番だろうと私は思う。

 返事が手紙で返ってくるとは露程も期待していないけれど。

 何て伝えよう。

 ううん、何を伝えよう。

 いいや、何か伝えたい?

 ううん、何を伝えたら。

 だって、何も無いのに。

 何て伝えよう。


 結局、私は手紙を書かなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る