第40話 コレクション
名も知らない友達がコレクションを見せてくれた。
趣味で集めている古い「紙」たちで、チケットと案内状がセットになっているもの、誰かへの手紙、走り書きしたメモもあった。
「これなんか、かなりめずらしいんだよ」
見せてくれたのは、金箔のふちどりがきれいなチケットと半券が切り取られている案内状だった。薄くなっている文字をなんとなく解読すると、どうやらプレミアム会員の特典イベントのチケットらしい。イベントの内容はわからないが、観覧するもののようだ。開催日と時間と場所、あとは観覧希望の確認が書かれているだけ。
‘観覧希望される方は……’
目が止まる。二度見した。
友達がくすっと笑う。どうだ、おもしろいだろ、と言うように。
‘観覧希望される方は、この案内状を受け取ってから12時間以内に引換券を持って会場へお越し出ください。尚、指定時間を1秒でも過ぎましたら観覧無効となりますのでご注意ください’
「受け取って12時間以内って、その日限りってことか」
「そ。それも夜中。会場はビルの地下。金持ちの中でもプレミアム会員の特典でやっと手に入る貴重な観覧席。それも当日限り。12時間以内に行かなければ無効だ」
沈黙。
「……奴ら、なにしてると思う?」
友達がにっこりと笑う。
ああ、この眼だ。
闇を知る瞳にいざなわれる感覚。
聞きたいような、聞きたくないような。
「金持ちの道楽は、いつの時代もそういうものだってことさ」
スッと手元の紙が引き抜かれ、友達の手に収まった。
闇は引いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます