第14回 怒り狂う女子プロレスファン

 今日(2024年7月28日)のスターダム・札幌大会でがおこった。


 ハイスピード・オブ・スターダム王者だった上谷沙弥かみたに さやが、挑戦者の星来芽依せいら めいに敗れ王座を陥落してしまったのだ。それだけだとよくある王座移動のニュースだが問題はここからで、メインのワールド・オブ・スターダム(通称・赤のベルト)選手権試合において、上谷はセコンドについていた王者・舞華まいかを裏切り、敵対していたの挑戦者の刀羅とうらナツコに加担して王座移動に貢献、さらに同時に新たに結成されたヒールユニット・H.A.T.E《ヘイト》に加入という、整理しないと何がどうなっているのか理解できないカオスな状況となったのだ。


 普通に女子プロレス好きな人からすれば「あー上谷、ヒールターンだってよ」と早々に状況を呑み込めるのであるが、そう簡単にはいかない人間だっている。ベストパートナーだった現・マリーゴールドの林下詩美はやしした うたみと袂を分かち、その林下に託されユニット・Queen's Quest《クイーンズクエスト》もリーダーになるも、H.A.T.Eの前身である極悪集団の大江戸隊との、ユニット解散を賭けたイリミネーションマッチで敗北し、ひとりぼっちになった傷心の上谷を応援していたファンたちである。


 林下やジュリアなど好きな選手がほぼマリーゴールドへ移籍する中、たった一人残った上谷を心底応援していた某氏は、今回の事件が余程ショックだったのか、このアングル(筋書)に対しめちゃくちゃ非難の言葉を浴びせていた。ついでに製作準備中だった応援動画も製作延期してしまうほどの狼狽ぶり。散々選手の移籍(引き抜き)については「何でも起こるのがプロレスだ」と擁護しているのに、自分が応援している選手がヒールに転んだだけでこれですか?笑えます。でもね、(上谷にではなくスターダムに)って事は、あちらさんの思惑に乗っかってしまったって事なのよ。いやぁ、いいだなぁ、本当に。


 今回の唐突過ぎる(とはいっても、ここに至るまでいくつか伏線は見受けられたけれども)ヒールターンは、あまりにも劇薬すぎて賛否両論だと正直思う。現スターダム社長の岡田太郎氏が仕掛けたであろうこのアングルは、宿敵・ロッシー小川がかつての《自分の団体》であったスターダムに残した《遺産レガシー》の払拭である、というのが大方の見方なのであるが、《岡田スターダム》というものを内外に知らしめるには、効果抜群の事件インシデントだと思う。もちろんこれに怒り絶望したファンたちが、商売敵であるマリーゴールドへ流れていくのも計算してのアングル決行だろう。未だにロッシー時代のを嗅ぎ続けている昔からのファンから「スターダムで初めて女子プロレスを見たよ~」という新規ファン層への代謝を図るためには絶対に必要だったのだ……かどうかは、今現在や直近三か月程度じゃわからない。早くて一年後にスターダムがどうなっているかで今日の結果がわかるはずだろう。

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