日本視点 5話
「まもなく陸軍省に到着する。総員銃を持ち衝撃に備えろ」
この号令の直後銃の弾が僕らの乗る兵員輸送車に当たる音が響き何かにぶつかった衝撃が車内に伝わったが恐らく門を車で突き破ったのだろう。
「行け行け」
この号令後皆で車から降り銃を構えながら庁舎内へと向かった。
僕は地下司令部の制圧部隊に割り振られたので地下へと向かった。
一応銃を構えているが昨日初めて銃を撃ったばかりで撃ち方もままならず、実戦経験は勿論ない。
しかし部隊の仲間達や上級少佐の後ろをついて行きなんとかやっとの思いで地下の司令室へと到着した。
途中で出会った兵士や軍属に対しては向かって来るもの対してのみ銃で殴り気絶させた。
発砲は極力していない。
地下司令部では案の定銃撃戦となり何度か命の危機に晒された。
しかし努力の甲斐あり地下司令部の制圧に成功した。
上級少佐は奥で一人の男と話していた。
「久しぶりだな、幸之助兄さん。まさか再開がこんな形になるとはな百合愛も悲しむだろうな…」
「俺も思ってなかったぜ?妹の旦那に銃を向けられるなんてな」
僕は奥の部屋のドアを開けた。
西九条さんがこっちに気がついた様子で振り返ってきた。
「来たか、彼が君の父を殺したナチスのスパイの神平幸之助だ。」
「へー、彼があの人の息子さんか。はじめまして僕が神平だ。」
「彼だけは生かしておいた、彼をどうするかは君次第だよ。」
西九条さんは言いながら僕に近づき構えていたのと別の小さな銃を僕に手渡した。
「西九条さん、僕にやれと言いたいんですか?」
「いや君次第だ、でも君は復讐のために近衛に入ったのだろう?それならば撃つより他ないだろう。」
僕は銃を手に握り神平幸之助に近づいた。
「君は僕を撃ち殺すつもりか、僕が君の父にしたように」
僕は彼に対して苛立ちを覚えたが一呼吸置き引き金に手を掛け、さらに近づいた。
「神平幸之助、お前は父を殺した最低なクソ野郎だ。それに加え皇帝陛下を撃った国賊だ。だからこそ僕はここで貴方を撃たない。貴方は法の裁きを受け、生きて償うべきだ。」
「酷い言い様だねー、僕はてっきり殺されると思ったのに君も甘いねー。だがさらばだ」
その瞬間神平は懐から一丁の銃を取り出した。
西九条さんは急いで僕を跳ね除けたが神平は予想外の行動をとった。
「僕だってねー、こんなんだけど軍人だ。生き恥を晒すなら自決する道を選ぶよ。」
神平は手に持った銃で自分の頭を撃ち抜いたのだった。
「西九条、日本を任せたよ。」
そういい神平は生き絶えた。
それから数時間後…
「首相発見!捕らえろ捕らえろ!」
クーデターは皇帝陛下御一行が帝都にお帰りになり完全に収束を迎えた。
柏原宮様が宰相に就任し、その他の大臣も帝室やその関係者、縁者で構成され完全な親政体制となった。
僕はというと、家に戻り母とともに父の遺産や貯金などで今までのように暮らした。
今までの暮らしとはいかなくても普通の日常が戻ってきた。
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