第29話 料亭
「旅の方ですか!?」
話しかけた人はやっぱりエルフ、その女性で、元気よく俺らの方を向いた。俺はその元気に押し負けてしまった。
「えっと、そうなんですけど……」
「それじゃあご案内します! ささ、お連れ様方もどうぞどうぞ」
エルフは俺の手を引いて歩き出した。
ショートカットの金髪で碧眼、すごく可愛いを、このエルフのステータスと言っておこう。
「木下、初めて女の子と手を繋ぐ、の巻」
「初めてじゃねえよ!」
「えぇ! うそでしょ?」
大舞や他の奴らも、手を引く俺ににやけ顔を向けながらついてくる。そのにやけは、そう、初めて好きな子が出来る小学生をからかう親戚のおじさんのような……。
「ところで、俺たち一体、どこに向かっているんですか?」
「お食事処です!」
「はぁ」
「なんの店なんや?」
「私、アレルギーちょっと多いんで、行けないお店多いですよ」
アナ、なんのアレルギーがあるんだろう。単純に疑問で、知っておかないとギルメンとして食事で困るし……。
「ところで俺の手はいつ離して貰えるんです?」
「到着するまでです!」
「まあ、予想はついてたけど……」
普通に恥ずかしいから早く着かねえかなぁ。
「エルフさーん。アナちゃん嫉妬するからやめたげてー」
「ちょっと、大舞さん! べ、別に嫉妬とかしませんから! 好きとかありませんから!」
頬を赤らめるアナを見て、ああそうなのかと悟る。俺も鈍感ではない。しかし、俺を好きになるポイントがないし当のアナは好きじゃないと言っている。ここは鈍感を演じておこう。
と、心に決めたが、すみません。内心心がピョンピョンしてます。可愛いエルフに手を繋がれて、他の女の子の気持ちに気づいたら、俺としては今日死ぬことを覚悟するくらいです。
「着きましたー!」
そんなこんなのうちに、食事処に着いたようだ。そこにあったのは歴史を感じる、屋敷のような……。
………………。
屋敷のような……。
………………………………。
屋敷……。
………………………………………………。
「えっと、ここは?」
「この街でも有名な旧料亭です!」
「旧料亭!?」
なんか凄そうな店に来てしまったみたいだ。エドルも目が点になっている。……慣用句ではなく、ガチで目が点になっている。
「ここが、か」
「哀、ここ知ってるのか?」
「ああ。以前月斬丸がこの場所があることを教えてくれてな」
「ご主人様が、ご客人はここに招くよう仰っておりましたので!」
「ご主人様?」
「はい! 少しお待ちください!」
そう言ってエルフは旧料亭の中に入って行った。
✳――――――✳
「話がつきましたので、こちらへお越しください!」
門から顔を覗かせ、エルフは手招きをした。
俺たちは門をくぐり、旧料亭へと入っていく。
中は綺麗で、明治か大正の時代に建てられたかのような造りだった。
「意外に現代風? って感じだね」
「日本の匂いがします……」
アナの言う日本の匂いというものが、辛うじてわかる気がした。
俺達は一階にある一番広い部屋に通された。畳だが天井にはシャンデリアのある、和と洋が混ざった造りだ。
部屋には座布団が六枚並べられ、それに向かい合うように大きな座布団が敷かれている。
「あちらのお席にお座りください!」
俺らは指されるままに、六枚の座布団、一人一枚ずつに座る。
全員が着席すると、さっきのエルフとは違う、今度は初老の女エルフが出てきた。桃色の着物を着ている。
初老のエルフは大きく息を吸うと、響く声で言った。
「我らが姫君、
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