三日目⑤
室内をまわりながらフラッシュを使って撮影しているキョウをよそに、サクヤはスーツケースを開ける。この時のためにと用意してきたサンダルと服を取り出した。
服を脱いでいると、
「サクヤ、なにしてはるの?」
キョウの声が聞こえる。
「ちょっと待ってて」
サクヤは、すばやく着替えを済ませ、見せに向かった。
「場所に合わせて、出迎えの服装にしたんだ」
サクヤはキョウの前で、くるりと廻ってみせる。
ガーゼ素材の花柄とチュールレースのデザインが施されたノースリーブワンピース。素足に履くのは、花柄レースと透かしかぎ編みベルトであしらったウッドソールのナチュラルサンダルだ。
「ほお、かわいいやん」
デジカメのシャッターを切るキョウ。サクヤはいろんなポーズを取ってみせた。
「ここは五つ星。そこそこのお値段のする高級ホテルだからな」
サクヤの言葉にキョウの指は止まり、デジカメを下ろす。
「出迎えって、トモとカコの? ドレスアップの用意しとらへんよ」
キョウの服装は、オフホワイトカラーのシンプルなスリットワンピース。インディゴのスキニーデニムにパンプスを合わせている。
「それなら大丈夫やと思う。変な格好してはると、周りを気にするトモが怒るかもしれへんやろ。荷物になってもええから、このときのためだけに持ってきた」
サクヤは部屋の時計に目を向けた。すでに空港には到着しているはず。予定通りなら、迎えに行ったホテル側の車に乗っている頃だろう。
カメラを片付けはじめたキョウに目を向ける。
「出迎えにロビーへ行くけど、どうする?」
「一緒に行く」
キョウは、サクヤにサムズアップしてみせた。
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