手元に残る
「かずあきはそゆこといわないからすきだったのに。。。」
思い切って繭夏に「好きだ」と伝えた返事がそれだった。
平仮名は彼女の癖でもあるが、「Love」と「Like」の違いを表そうともしたのだろう。
スマホの画面が震える。花びらなんか散らさないでくれよ。
「じゃあ、今のは見なかったことにして」と泣き笑いの絵文字をつけて送る。
すかさず話題を変えようと「で明日、前借りてたハンドクリーム返すけど」いつ頃教室に行けばいい?と書こうとしているうちに
「むり」
と返ってきた。焦る気持ちを抑えて「いつ頃がいい?」まで打って送った。ともかくいつもに戻りたい。
「あれならあげる」
「せんべつ」
「うってもいい」
繭夏から連投が来る。
「さよなら」
「待てよ、明日じゃなくていいから返すよ」
約束を取り付けて終わりたい。
「わたしクリームかえる」
「かずあきがおとこだとおもったらもうだめだった」
「シェアするのキモイ」
その言葉を最後に、繭夏は俺をブロックしたようで、もう何を打っても既読は付かなかった。
俺はベッドに仰向けに倒れこんで、右肘を両目の上に置いた。ふと、繭夏に借りたハンドクリームが手に当たる。
繭夏の手にはいつもこれが塗られていた……。借りる時に、少しだけ触れた繭夏の手……。
俺は繭夏の手を握るイメージをしながらチューブをやさしく握り、繭夏の幻影を追うことにした。
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