第12話『脱落していく者』


 ステージ2をクリアし、アルストロメリアはステージ3へ急ぐ。残り時間が切れそうになったタイミングで、再び時間チャージをするのだが――。


《残り時間が――》


 電子マネーでチャージをするのだが、本当にコインで支払いできるのか、周囲を見回してもコイン挿入口はない。


 おそらくはコイン投入式のARゲームでなければ不可能と言う事なのだろう。時間切れに気付かず、プレイしているとタイムアップで強制ログアウトだ。


 ARゲームはゲーセンにあるようなゲームと違って、連コインに代表される迷惑行為を強く言及される事はない。


 その理由は色々とあるかもしれないが、ARゲームの支払い方法が異なる事があるだろう。


 メッセージが表示されてから時間切れに気付くようでは、タイムアップした際に後悔するかもしれないだろう――と。


 他のプレイヤーはどうだか知らないが、ARゲームではゲーセンでは常識な待機マナーと言う物が通じないと言える。


 ゲーセンに置かれているゲームとARゲームを比べるのも、と言えるかもしれないが、一般マナーの部類は知らないで通じる訳がない。


「これは、知らない内にクレジットが吸われるタイプの――」


 ふとアルストロメリアは閃くが、ソシャゲのいわゆるアイテム課金の類はネット上で知った程度の知識しかなかった。知ったかぶりで語ると痛い目を見るのは、ソシャゲでもARゲームでも一緒である。


 しかし、炎上勢力は、そんな事はお構いなしで炎上させてくる為、躊躇していたら――終わりだろう。


《チャージを完了しました――》


 ARメットのバイザー部分にはメッセージが表示され、再びゲームのプレイに戻る。


 ローディングが終わり、切り替わったと同時にマップ表示でこちらへと向かっているような赤いターゲットポインターが――接近していた。


 これが何もなのか調べようとしたが、それをしている余裕さえもない。アルストロメリアは矢印の指示通りに次のステージへと急ぐ。


 走っても追いつかれるが、ボードの類を所持している訳ではないので、移動手段に悩む。その結果として、ダンスを踊るタイプのリズムゲーム並に運動量が激しい。


 アルストロメリアの疲労は限界に近付いているかもしれないが、自動販売機が置かれている訳もないので――次のステージへと急ぐ。


 疲労に関してはARインナースーツのおかげで何とか緩和されているだろう。それでも、小休止をしていないに等しい彼女は、疲労のピークに達しようとしている。


 オーバーワークであればARガジェット側で警告が表示され、強制終了となるのは別のジャンルで事例があるのだが、ファンタジートランスでは――。


【霧島がオーバーワークでログアウトしました】


 まさかのメッセージがARバイザーに流れてきた時は――ブラフなのではないか、そう判断していた。


 それ以外のプレイヤー、センターモニターで見ていたギャラリーも言葉が出ない。しかし、こういうシステムなのだとアルストロメリアは判断する。



 この他にも何人かがオーバーワークで強制ログアウトされたが、それらは体力に多少の自信がある程度のプレイヤーばかり。


 現役アスリートでもARゲームではジャンル違いで戸惑う話はネット上にもあったが、それを見せつけられた形だ。


 歌い手や実況者、動画投稿者も同じように強制ログアウトでゲームオーバーと言う事例が多い。ARゲームは体力も使うゲームなのである。


「リズムゲームでは体力を激しく消耗する機種もある。わずかな慢心があれば、そこから一気に崩れ――ゲームオーバーになるだろうな」


 次々とオーバーワークでのゲームオーバー事例をモニターで目撃するカトレアは、甘い見通しでプレイする事が地獄を見る事につながる事――それを知ってほしいと感じていた。


 軽い気持ちでゲームをプレイして、挫折し、クソゲーとネットで炎上させる行為に走られる位ならば、ゲームプレイの敷居を引き上げてしまう事をカトレアは考える。


 コンテンツ流通を阻害するようなネット炎上分子を生まないようにする為、カトレアは様々な部分で考え――今回の難易度に到達した。


 何故、ここまでの難易度にしてしまったのか――運営側からの批判はゼロではない。難易度を下げて多くのプレイヤーを集めるべきと言う意見も出た。


 しかし、議論を重ねたとしても――メジャーなARゲームに挑むには無理があり過ぎるし、超有名アイドルとのコラボやタイアップで釣るのも――それだけで炎上させる勢力がいるので、それも不可能。


 その結果として、今回の難易度を採用して様子を見る事にしたのだ。不幸中の幸いなのは、試作型の特殊なARガジェットを使用出来た事である。


 このチューブを接続する事で特殊なスキルを使用出来るタイプのガジェットは、他のジャンルで使えば瞬時でチート認定を受けるだろう。


 だが、ファンタジートランスではどうか? 高い難易度も相まって――うまくバランスが取れている。


 その一方でガジェットの性能ありきなゲームバランスも、ある意味で他のARゲームにおけるガジェットの能力インフレを起こす。


「我々は――何を求めようとしたのだろうか」


 現在のルームで残っているメンバーは数十人程度だが、すぐにゲームオーバーしたプレイヤーと入れ替えでログインするプレイヤーもいる。


 ファンタジートランスは、いわゆる入れ替え制を採用しているARゲームだった。仮に混雑したとしても、センターモニターで整理券を発行するので――ある種の連コイン行為は出来ないだろう。


「このゲームバランスでよかったのかは――これをプレイしたプレイヤーが決めるべきだ。エアプレイだったり未プレイの人間が語って良いものではない」


 カトレアがタブレット端末で見ていたのは、いわゆるエアプレイでゲーム題材の二次創作小説を書き――ランキングトップを取れるのか?


 明らかにネット炎上案件と言えるような、テンプレ案件とも言えるまとめ記事だった。

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