第41話彼女の過去②



「怖いよ。お姉ちゃん」


「安心しろ。お前たちのことは、絶対に私が守ってやるからな」


私は妹を抱きしめる。


「お姉ちゃん」


妹は体の震えを止めた。


 そんな日々が、どれだけ続いたであろうか?


「資金援助を拒むというなら、それでもいい。では、この傾いた経営をどうする気だ? 何か、いい案を出してくれ」


「もう少し待っていてくれ。義捐金を集めているのだ」


 日に日に激化していく、私の周りで起きる争い。


 何を理由に争っているか、幼い私でも理解できた。


 私がここにいるせいなのだな。


「そんないつ、どれぐらい貯まるか分からんものをあてにできるか。この子をアイツらに引き渡せば、それで簡単に解決するんだよ」


「アンタ、子供を売る気か? あいつらにこの子を渡したら、どういう目に合わされるのか分からないんだぞ」


「うるせえ。ほかの子供を養うためには、それしかないんだよ」


 だんだん、大人の意見がまとまってきた。


 私をAFに拭き渡す方に。


 それに反対する奴はまだいる。


「お前、いつまで反対している気だ?」


「そうだ。ほかは全員賛成しているんだぞ」


「次の日曜日にあの人たちが引き取りに来る。その場で何かをしようと考えるなよ」


だが、私をかばう人は肩身が狭い 。


「わかった。あの子のことはあきらめる。ごめんよサーシャ。私ではお前を守りきれなかった。許してもらえると思えないが」


かばっていた男は、私に頭を下げる


 ついに、私の未来は決まった。


 運命の日曜日。


「この子のことをよろしく頼みますよ。賢い子です。きっと、あなたたちのお役にたてるでしょう」


「ええ。私たちが責任を持ってこの子を育て上げて見せます。あなたがたに誇れるぐらい、立派な姿へ」


 そう言ってAF職員は、不気味に笑った。


「サーシャ」


最後まで反対していた男が私の名を呼ぶ。


「せんべつではないが、このぬいぐるみを持っていきなさい。クマさんだ」


罪悪感を感じていることは、幼い私にも理解できた。


「ありがとう。大事にするね」


私な何も気づいていないフリをして、それを受け取る。


「失礼ですが、以前、言っていた援助のお話は……」


私の値段交渉か。


「それでしたら、これぐらいでどうでしょう?」


AF職員は紙を渡す。

 

その時の私は、それが小切手であることを知らない。


「ひょっとして、この金額では足りませんでした? それならもう少し出させていただきますが」


「いえ、十分です。これだけいただければ、私たちは暮らしていけます。みんな、お姉ちゃんにお別れを言いなさい」


「お姉ちゃん。私たちのことを忘れないでね」


「時々この施設にも来て」


「ああ、約束するさ」


 こうして私はAFに引き取られた。


 これが私の抱える事情だ。


 あれ以来、私は自分の家族とは会えていない。

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