第12話 最初期のカフカ
来訪ありて出立あり
別離ありてしばしば……再会なし。
プラハ 11月20日。
フランツ・カフカ。
なんと多くの言葉がこの本に書かれているのだろう! 思い起こさせんとばかりに!あたかも言葉が思い起こす力を持っているかのようではないか!
というのも言葉は無能な登山家や鉱員なのだ。こいつらは山頂からも谷底からもお宝を取ってきはしない。
しかし生き生きとした回想というものがあって、あらゆる思い起こす価値のあることどものうえを愛撫する手のように優しく撫でるのである。そしてこの灰から炎の煌めきが立ち昇るとき、灼熱のように情熱的に、たくましく力づくで、君は覗き込むんだ、まるで不思議な魔法によって虜にされるのかのように、そして…………
しかしこの純潔な回想の中へ書き入れることは不器用な手と粗野な道具ではできないのだし、それにこういったことはこの白い慎ましい頁以外では書けないのだ。一九〇〇年九月四日。
フランツ・カフカ
Die Werke von Franz Kafka 中澤一棋 @DeinFranz
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