イチオシの作品をひとに薦める、もしくは好きなものを好きと言うための文章――テレビアニメ・シリーズ『Re:ゼロから始める異世界生活』編【約2,200文字】

■前置き


わたしはひとに物を薦める趣味を持たないが、自分の好きなものの魅力がどのようにしたら伝わるかを考えるのは楽しそうだと思って筆を執った。今回は(次回があるかわからないが)長月達平の同名のライトノベルが原作の、『Re:ゼロから始める異世界生活』の第1期と第2期(2nd season)をとりあげる。


ネタバレするので、ネタバレ厳禁のひとは読まないように気をつけられたい。


それでは本題に入る。


■本文


まず断っておきたいのは、わたしがこのシリーズの第1期のはじめの数話を視聴していないことです。わたしが視聴しはじめたのは第5話か第6話からだったと思います。いずれにしても原作の第一章が終わり、第二章に入ってから2話か3話目でしょう。


原作の第一章にあたる部分を視聴していないことになりますが、それでもわたしがこのアニメひいてはコンテンツを好きになったのには必然性があると思います。なぜかと言うと、原作者の意向に反しそうな言い方をしますが、原作の第二章からアニメ第1期の事実上のメイン・ヒロインが登場するからです。


言い忘れていましたが、主人公は不登校ぎみの男子高校生で、深夜にコンビニに行ったときに異世界に召喚されたものと記憶します。いわゆる「異世界転移もの」では、現実から異世界に行くときに女神に会って何らかのスキルをもらうのが約束になっている/いたようですが、本作はこの約束(=テンプレ)を踏襲していません。


主人公は、女神からスキルを与えられてこそいないものの、自身に特殊な能力が備わっていることに程なく気づきます。「死に戻り」です。「死に戻り」とは、死亡したときに過去の特定の時間にタイム・リープする特殊能力です(なお、死に戻りする前の記憶は残ります)。この能力が本作をして「ループもの」ならしめています。


死に戻りすることは、死ぬまでに味わう苦しみを軽減することを意味しません。本作の「ウツ展開」の長さが指摘されるのももっともなことだと思います。ウツ展開ばかりだと視聴するのがあまりに過酷になりそうですが、ギャグも多めであり、長かったウツ展開の終焉は大きなカタルシスをもたらします。その作風は視聴者にいくらかの忍耐を要求するように思います。


第1期のクライマックス(の直前?)の場面で、わたしの涙腺はゆるみました。そこにいたって作品のタイトルは回収され、先に挙げた第1期の事実上のメイン・ヒロインがその立ち場を確たるものにしたように見えます。原作の第1巻が世に出てから10年は経っているでしょうが、その人気はいまでも(おそらくシリーズ全体のメイン・ヒロインよりも)高いに違いないと思います。


話しを第2期に移したいと思います。わたしはそれをさほど期待せずに視聴しました。その期待は良い意味で裏切られ、わたしの評価は第1期と同等以上です。ただ、世間の評判はそうではなかったようです。その最大の要因は、例の第1期の事実上のメイン・ヒロインの出番がほとんどなかったことであろうと推測します。


なぜわたしの第2期の評価は世間のそれと食い違ったのでしょうか。わたしが第2期を評価するおそらく最大の要因は、前半クールのエンディング・テーマです。第1期のそれは傑作と言っても良く、それを超えるのは無理であろうと当初のわたしは考えていました。


ところがふたを開けてみると、別のひと(アーティスト)を起用しながら、1度聴いただけでハマる(わたし的に)最高のアニメソングでした。わたしはこのシリーズの特にすばらしい点を本編からエンディングに入る際の計算されつくしたようなタイミングだと思っているので、これはうれしい誤算でした。楽曲だけでなくアニメーションも、何度も見返すほど洗練されていました。


また、シリーズ全体の第29話(第2期の4話目)「親子」の回は感動的でした。わたしは現在も原作の小説を読み進めているのですが、この回の話しが、シリーズの主題(=テーマ)が「家族」であることを決定的に示したようにも思えます。それはそれとして、(わたしの見たところ)「家族」が主題になっているため、ひどい家庭環境で育ったひとは本作を生理的に受け付けないかもしれないなと思います。


また、前半クールから後半クールへと導入する場面は、完璧と言いたいくらいに見事でシビレました。先にこのシリーズの主題を「家族」と認識したことを話しましたが、友情のあるべき姿もここに示された感じがします。このような男どうしの友情をえがいた場面は、BL(ボーイズ・ラブ、薔薇)好きのひとのこころにも刺さるかもしれないと思いました。


ほかにも、第2期から登場するリューズがけっこう好きだったり、主人公がベアリトリスと紆余曲折のすえに和解にいたってカタルシスを覚えたりしました。また、本作のギャクもわたしはだいぶ好きです。


語り出せばキリがありませんが、まずはこれでじゅうぶんだろうと思います。なので今回はこれでおしまいです。


■後書き


わたしはかねてより好きなものを好きと言いたいと思っていた。ただ、そう言うだけで耳を傾けてくれるひとはまずいないことだろう。この随筆(=エッセイ)などでこれまでたびたび試みてきたことが、ようやく形になったように思う。


ここまで読んでくださった皆さま、どうもありがとうございました。


※敬称略

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