第25話 魔法披露


 数分後アンとアメリアの漫才が終わり、落ち着いたところで四人は話を始める。


「で、あんた……アメリアだっけ?」

「その通りだ。もう一度自己紹介をしておこう。S級冒険者、『洪帝』のアメリアだ」

「はいはい、わかったわかった。で、そのS級冒険者のアメリアさんが俺に何か話があるのか?」

「ああ、史上三人目のSS冒険者が隣町に現れたって聞いたのでな。どういう者か気になって来たのだ」


 アメリアは、リュークを下から上に眺めるように見る。


「しかし、こうして見るとただの子供に見える。リュークといったな? 今お前は歳はいくつだ?」

「十二歳だ」

「十二!? 子供だとは思っていたが、本当に子供なのだな!」

「子供子供言うなよ、あんなに騒いでたやつに言われるとより一層腹が立つ」


 先程まで男女が抱きついてる光景を見ただけで、狼狽えていたアメリア。


「なっ!? そ、それは関係ないだろ! お前らがあんな体勢でいたのがいけない! というかお前達、十二歳でそんなことをしてるんじゃない!」

「だから違うって言ってるじゃない!」

「私なんて二十歳になっても彼氏もいなければ男友達もいない……。ああ、なんか落ち込んで来た……」

「お兄ちゃん、勝手に自滅してるよこの人……」


 アメリアは今までの自分の人生を思い出し、膝をついて崩れてしまった。


「……よし、鍛錬再開するか」

「あれを無視するの!?」

「お兄ちゃんって結構鬼畜だよね……」

「勝手に落ち込んだやつが悪い。あとあまり関わりたくない」

「それは同意するけど……」

「はっきり言うんだねお兄ちゃん」


 リューク達はまだ落ち込んでいるアメリアを横目に見ながら、少し離れたところで鍛錬を始める。


「よし、じゃあ二人とも魔力は感じ取れたな?」

「うん! 多分感じ取れてるよー!」

「そうね、リュークのお陰で……」


 アンは先程のことを思い出したのか、少し頬を紅く染める。


「今それは体内で魔力を感じ取ってるだけだ。その魔力を身体の中で巡回させて練り上げて、魔法を使う為に適した形に整えなければならない」

「なんか難しいよお兄ちゃん……」

「まあ、簡単に言えば身体の中で魔法を使う為に準備をしなければならないってことだ」

「そういうことね……どうやってやるのかしら?」

「身体の中の魔力を感じ取ってまずは……手の先に魔力を集中させようとしてくれ」

「わかったわ……」


 アンとアナは右手を地面と水平くらいまで上げて、目を瞑る。

そして、先程感じた魔力を手の先に集中させようとする。


「……駄目ね。魔力は感じ取れるけどそれを手の先に集めようとしても全然出来ない」

「私も……。お兄ちゃん魔力を集めるのが出来ないよ……どうやってやるの?」

「うーん、どう教えようかな。じゃあ、俺が見本見せるから。見ててくれ」


 リュークは二人と同じように右手を前に出す。

その手の平は森に向けている。


「ここから……約一キロかな。離れたところに少し大きい魔物がいる」

「え……そんなのわからないよお兄ちゃん」

「森の中って……木が茂って一キロ先なんて見えない」

「ああ、目で見えてるわけじゃない。魔力反応を感じてるんだ」

「魔力反応だと!?」


 リュークの言葉に今まで落ち込んでいたアメリアが驚いたように飛び起きる。


「一キロ先の魔物の魔力反応がわかるのか!? そこまで魔力探知が可能なのか!?」

「ああ、半径二キロはいける。一方向に伸ばそうと思えば五キロちょっとはいけるかな」

「なんということだ……私は一方向に伸ばして三百メートルがギリギリだぞ……」

「ねえお姉ちゃん、魔力探知って何?」

「わからないけれど……今の話を聞いてる限り魔力を感じ取る力じゃないかしら?それが強いと距離があっても感じ取れるらしいのね」


 リュークは手の平に自分の魔力を集中させ始めた。


「なんという魔力だ……凄い魔力量が手の平に収縮されている」


アメリアがリュークの魔力操作に驚いて目を見開いている。


「アン、アナ。よく見とけ、高速で撃ち出すから見えるのは一瞬だ」


 リュークは小指を下に向けて拳を握り、親指と人差し指を開いて狙いを定める。


「『炎銃丸ヴァンバレット』」


 リュークの人差し指の先から、炎の小さな塊が高速で撃ち出される。

肉眼ではほとんど見えない。

辛うじて一瞬リュークの指先から何か赤いものが飛び出たと認識できるレベルだ。


「い、今のは大丈夫なのか!? あんなに魔力量を込めた火属性魔法を森に向けて放ったら火事にならないか!?」

「いや、大丈夫だ。というかもう命中してるから」

「アナ、今の見えた?」

「ほとんど見えなかったけど……お兄ちゃんが魔法を放ったらしいね」

「じゃあ、ちょっと取ってくるな」


 リュークは今仕留めた魔物のところまで時空魔法で跳ぶ。


「なっ! あやつは時空魔法も使えるのか!? 私以外の時空魔法使いに初めてあったぞ……。しかも魔力探知が私より広いから、跳べる距離も広い。やはりSS冒険者の名はダテじゃないか……」


 アメリアがそう騒いでる間に、リュークは仕留めたという魔物を連れてまた跳んできた。


「なっ!? これは……ワイバーンではないか!!」


 リュークが連れてきた魔物はワイバーン。

ドラゴンの頭に羽を生やし二足の脚で立ち、蛇のような尻尾を持つ。

体長は約五メートル。

 リュークが少し大きいと言っていたが、普通の人から見れば少しどころの話ではなかった。


 ワイバーンは群れを作る。

 しかし、時々こうして群れからはぐれたワイバーンが出現するのだ。

街の近くに降り立った時は最悪。

一匹で小さな街なら一日で壊滅させられる。


 このワイバーンは頭がなかった。

リュークが放った魔法が強靭な鱗を破り頭に入り、内部から爆発したのだ。


 そして、ワイバーンはドラゴンの一種。

アメリアは、こいつを倒してS級冒険者になったのだった。

アメリアも、街の近くに降り立ったはぐれワイバーンを倒したのだった。


「そんな……私が死闘を尽くして勝った相手に……一キロ離れたところから魔法一発だと……」


 アメリアはこれ以上落ち込めないのではないかというくらいに落ち込み、膝をつき項垂れる。


「S級冒険者との力の差がそこまで離れてるんだお兄ちゃんって……」

「強いとは思ってたけど……まさかそこまでだったなんて」

「……ここまで落ち込まれると俺なんも悪いことしてないのに悪いことをした気持ちになってくるな」


 リューク達はアメリアをもう一度放っておく。


「よし、今ので魔力を集める感覚はわかったか?」

「お兄ちゃんの魔力が手に集まってたのはわかったよ!」

「魔法はほとんど見えなかったけれどね……」

「まあ今は魔力を集中させることをやるから、魔法はまだいい。じゃあ、魔力を手の先に集中させてくれ」


 アンとアナはリュークに言われた通りに鍛錬を再開する。


 側にS級冒険者という冒険者の憧れの存在がいるのに、それを無視するのはこの三人くらいだろう。


 その無視されているS級冒険者、アメリアは……今もなお地面に突っ伏して落ち込んでいた。

その周りには、どんよりとした空気が流れていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る