第22話 双子の弟子入り


 リュークはアルンが去った後、鍛錬は止めて帰路についた。

アルンと話していたら完全に日が昇り、街の喧騒が聞こえてきた。


 リュークは早く帰らないとアン達が心配すると思い、少し早足で歩く。


 街を抜け、アン達の家に帰ってきた。


「ただいま」

「あ、お兄ちゃん! どこ行ってたの⁉︎」

「アナ、悪い。ちょっと朝の鍛錬に行ってたんだ」

「リューク、おかえり」

「ただいま、アン」

「あ、おかえりなさいお兄ちゃん!」

「おう、ただいま」


 アンとアナは、台所に立ち朝食を作っていた。

リュークは二人の姿を見ながら、リビングの椅子に座る。


「メリーはどうした? まだ寝てるのか?」

「メリーはもうギルドに行って仕事してるよ!」


 リュークの問いに、アナが答える。


「へー、朝早いんだな、ギルドの受付嬢ってのは」

「やっぱり大変みたいよ、事務の仕事ってのは……金銭の管理とか、冒険者への仕事の斡旋とか。その分給料が良いから……」


 アンが料理をしながら話すが、リュークはアンの横顔が少し寂しく、そして悔しそうに見えたのに違和感を感じた。


「アン、どうしたんだ? なんか暗そうな顔して…」

「え? ああ……私とアナがこうして暮らしてられるのは、メリーのおかげなの。この家も、今作ってる食事も……全部メリーが稼いだお金で買ったものなの」


 アンの言葉に、アナも料理を作りながら少し気まずそうに俯く。


「普通、F級の冒険者はその日の食事を食べるのもキツイの。宿なんて絶対に取れない。野宿が当たり前……だけど私達は、贅沢な暮らしをメリーにさせてもらってる……それが、ありがたいけどメリーには何も返せてないから申し訳なくて……」


 アンは悔しそうに下唇を噛む。

アナもそう思ってるらしく、包丁を持ってる手が少し震えている。


「……まあ、俺からは特に何も言えないが……そう思うなら、早く恩返しが出来るように、強くならなきゃな」


 リュークは二人の後ろ姿を見ながらそう呟く。


「ええ、リュークの言う通りだわ」

「だけど、私達を魔法操るの上手くないし……魔力量も多くないしね……」


 リュークの言葉にアンは強く頷くが、アナはまだ落ち込んだようにそう言った。


「そりゃあ練習してないからだろ? 練習すれば誰でも出来るよ。なんなら俺が教えてやろうか?」


 リュークがさり気なく言った言葉に、アンとアナは食いつく。


「え! お兄ちゃんが教えてくれるの!?」

「お、おお……まあ、お前達が俺に教えてもらいたいなら全然良いけど」

「こちらからお願いしたいくらいだわ! 本当にいいの? リューク」

「おう、全然いいぞ」

「だけど、私達あなたに返せるものがないわ……ただでさえ昨日あなたには助けてもらったのに……」


 リュークの提案に乗りたいが、命を助けてもらった恩があるのに、それ以上恩を重ねることに、アンが少し躊躇ってしまう。


「うーん、じゃあ二人には俺に世界を教えて欲しいな」

「世界?」


 アナが問い返す。


「そう、二人はもう知ってると思うけど、俺は世間知らずだから。だから色んなことを教えてもらいたい。ほら、これで対等だろ?」

「……ふふふ、そんなのでいいなら、喜んで教えるわ。ありがとう、リューク」

「ありがとうお兄ちゃん!」

「おう、俺こそありがとな」


 三人はお互いに顔を見合わせ、笑い合う。


「じゃあ、ギルドに行って依頼を受けてから魔法の練習をしようか。それで、夜になったら二人から俺が教えてもらおうかな」

「ええ、それでいいわ。とりあえず、朝食を食べましょうか」

「お兄ちゃんお待たせ! じゃあ食べよう!」


 アンとアナが朝食をテーブルに持っていき、そして三人で食べ始める。


「あ、私達お兄ちゃんの弟子ってことになるのかな?」

「んー、そうね。そうなるのかしら?」

「俺も教えてもらうから、弟子ではないんではないか?」

「んー、弟子だったらお兄ちゃんじゃなくて……お師匠様?」

「あら、そうしたら私もお師匠様と呼んだ方がいいのかしら?」

「堅苦しいな……いいよ今まで通りで」

「そうだね! お兄ちゃんの方がしっくり来る!」

「ふふふ、そうね。リュークはお師匠様って感じじゃないわね」

「なんか釈然としないが……威厳がないってことか?」


 他愛もない会話をしながら朝食を食べ、そして食べ終わったら支度をして冒険者ギルドに向かう。


「二人は武器を持たないのか? 魔法は普通は杖を使って発動した方がいいんだろ?」


 ギルドに向かう道を歩きながら、リュークがアンとアナに問う。


「そうね、そうした方が魔力を操りやすくなって魔法も強くなるけど……」

「杖は高いからね……F級の私達じゃ到底買えないよ」

「そうなのか。じゃあ、ギルドに行った後買いに行こうか。昨日俺金貰ったから、買えると思うぞ。どんだけ高いのかわからないけど」

「え? 昨日の報酬って……S級相当の以来だったわよね? いくら貰ったの?」

「たしか……千万ゴールドだっから、二人で五百万ずつの杖を変えるよ」

「そんなに貰ったんだ! 五百万の杖ってお兄ちゃん、そんなのA級冒険者が使う杖だよ、そんなの流石に買ってもらえないよ」

「そうか? 俺は別にいいんだけどな。まあ適当に買ってあげるよ」


 三人がそんな話をしていると、冒険者ギルドに着いた。


 中に入ると、仕事内容が貼ってある掲示板の前に、冒険者達が何人もいて、仕事の取り合いをしていた。


 三人は、受付カウンターに行き、メリーを見つけ話しかける。


「ようメリー。おはよう」

「あ、リュークさん! おはようございます!」


 メリーはカウンター内で仕事をしていたが、リュークの話しかけられ顔を上げて笑顔で挨拶を返す。


「メリー。私達は今日も薬草を取りに森に行くわ。昨日の依頼まだ達成してないしね」

「それで私とお姉ちゃん、お兄ちゃんに魔法教えてもらうことになったんだ!」

「え、そうなの? リュークさん、いいんですか?」

「ああ、二人にはお世話になってるし、俺も教えることで何か得るものがあるかもしれないしな」

「そうですか。じゃあ、アンとアナをよろしくお願いしますね」

「ああ、任せろ」


 メリーとカウンター越しに話していると、背後から話しかけられた。


「お前がSS級冒険者のリュークなのか?」


 リューク達はその言葉に振り向く。


 するとそこには、女性がいた。

水色の髪で、腰まではあるんではないかという髪を結わずに流している。

その女性の後ろに従うかのように三人ほどの女性が付いていた。


「……そうだけど、お前は?」


 リュークはその女性に問い返す。


「む、私を知らないか……世間知らずなやつだ」


 女性は少し不機嫌そうになりながらも、凛として答える。



「私は『洪帝』のアメリア。S級冒険者だ」

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