第16話 盗賊団のボス
リュークが盗賊達を捕らえて、アン達と話している時――
山の中を一人の女盗賊がもの凄いスピードで駆けていた。
その女盗賊は、リュークと仲間の盗賊達の戦いを見ていた。
盗賊達は、七人がリュークの目の前にいて、一人隠れて背後からリュークを狙い、そしてもう一人がもっと遠くからその様子を伺っていた。
いつも商人などを襲う時は、何人かで最初に襲い、一人が気配を消して射撃、そしてもう一人がもしもの時があった時にボスに連絡するために隠れていた。
そして今、そのもしもの時が訪れたので自分達の拠点に行ってボスに報告するために駆けていた。
(あいつは化け物だった……! 私達の精鋭部隊が束になってかかっても、手も足も出ないなんて……! 早くボスに……あの人に報告しなければ!!)
その女盗賊は全力疾走で森の中を走り、そして拠点である洞窟に辿り着いた。
そして中に入り、奥の部屋にいるボスのところまで行く。
ボスはその部屋の椅子に座っていた。
ボスはその女盗賊が入ってきた入口の逆方向を向いていた。
「どうしたんだい? そんな慌てて……」
「ボス! 報告します!! 南のルートで精鋭部隊が冒険者一人に捕らえられました!!」
「……なんだって?」
その言葉にボスは女盗賊の方を向く。
「……捕らえられた? 殺されたではなく?」
「はい……土魔法で八人全員を拘束していました」
「土魔法ね……相手は何人だい?」
「ひ、一人です……」
「……なんだって? 精鋭部隊はA級冒険者三人より強い部隊だよ? それをたった一人で?」
「は、はい……」
「S級冒険者……にしても強すぎる気が……」
ボスは顎に手を当てて考える。
(S級冒険者みたいな規格外な奴なら精鋭部隊を殺すことは出来るかもしれないが、捕らえることは出来るか? 捕らえるとなると、実力がどれほど上なのかわからない……)
女盗賊がボスに報告していると、もう一人女盗賊が部屋に入ってくる。
「ボス! 一人の男がこちらの拠点に近づいてます! その距離二キロほど!」
「なっ!? まさかあの冒険者!?」
「男なのかい? 魔法使いだから女だと思ったが……」
「はい……魔法も使えますが、身のこなしも大したものでした。精鋭部隊の攻撃を全て見切り躱していました」
「……あんた、どれくらいの距離を空けて見てた?」
「ボ、ボスに言われた通り二百メートルは空けていました……」
「それに気付かれたのか……」
確かにボスは、二百メートル離れるように言っていた。
魔法使いは魔力探知を使い、自分の届く範囲なら人の気配は捉えられる。
だからボスは自分の探知魔法の限界の半径百メートルの倍離れるように言ってあった。
それに気付かれたということは、自分以上の魔力探知を持っているということ。
「……お前達、Dプランだ。他の奴に伝えろ」
「っ! はい!!」
二人の盗賊はその場から離れすぐに他の仲間に伝えに行く。
――――
リュークは一人で洞窟の前に立っていた。
リュークが盗賊達を捕らえた後、リューク達から離れるように駆けて行った者をリュークは探知魔法で捉えていた。
リュークの探知魔法は半径二キロである。
二百メートルほど離れている人物がいることぐらい最初から知っていた。
そしてその人物が駆けて行ってから、アン達に捕らえた盗賊達を見張るように言って、自分は一人、離れていった盗賊を追ってここまで来た。
そして、リュークは洞窟の前で少し困惑していた。
何故なら、数人の女達がほぼ裸同然で正座で洞窟の入り口にいたのである。
八人の女達が上半身裸、下半身は下着を履いているだけであった。
「……よくわからないけど、ここにいる皆んな盗賊か?」
「はい、そうです」
一人の女がリュークの質問に答える。
「私はこの盗賊団の、ボスをしております。私達盗賊団は、あなたの力に屈服致しました」
「……要するに降参ってこと?」
「そう捉えてもらって構いません。私達をあなたの女にさせてください」
「……」
「奥の部屋に、今まで奪ってきたものがあります。全て貴方のものにして構いません」
女達は正座したまま話す。
「……そういえばなんで裸なの?」
「敵意がないことを表そうとしてでございます」
「……奥の部屋に、奪ってきたものがあるの?」
「はい、金になるものなど様々。そして……一人奴隷に送ろうとしていた者がいます」
「奴隷?」
「はい、十歳ほどの女の子で容姿が整っていたので奴隷にして売ろうとしておりました。その者も貴方のものにして構いません」
盗賊団のボスと名乗る者は喋り続け、リュークは見下ろしながらその話を聞く。
「……とりあえず、その女の子に会おうかな」
「わかりました。では奥の部屋へ」
ボスがリュークを案内するために立ち上がり、リュークの前を歩き奥の部屋へと向かう。
他の女盗賊達も立ち上がり、リュークの後ろについていく。
そして奥の部屋に行くと、中央に少し豪華な机と椅子があり、入り口から右手に色んなものが置いてあり、それがおそらく金になるものだろう。
左手に、みすぼらしい格好をした女の子が手錠をして座っていた。
背丈や顔を見る限り、リュークやアン達と同じくらいの年。
その女の子が、リュークを少し怯えたように見ていた。
「……あの子か?」
「はい、そうです」
「手錠の鍵は?」
「こちらです」
リュークが盗賊達に聞くと、ボスと名乗る者が答える。
そしてリュークは鍵を受け取るとその女の子に近づき、手錠を外す。
「大丈夫?」
リュークは女の子にそう聞くと、女の子はリュークを見上げながら頷く。
「……ありがとう」
そう言って、女の子は目を潤ませながらリュークに抱きつく。
よほどか怖かったのであろう。
リュークもその抱擁を受け止める。
「……近づいてくれて」
女の子はナイフをリュークの胸に突き刺した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます