第40話 科学部、位置を特定する!
「ふと思ったんすけど、俺らって今、どこにいるんすかね?」
「それ、訊くー?」
嫌な事を訊く男である。パンゲア大陸を知らないからこーゆー事が聞けるんだよな、お前。
「あ、なんか作者の機嫌が悪くなったみたいよ? ツッコんじゃいけないとこだったんじゃない?」
「僕もそう思いますね。きっと何か重大な矛盾があるんですよ」
「実はねー、パンゲア大陸の頃の日本って……北極近くにあるんだよねー」
「えええっ? マジすか! なんで?」
はい、皆さんすっかりお馴染みプサロニウスの茎、登場である。
「現代ではここにユーラシア大陸、左の下にくっつくようにアフリカ大陸、そのすぐ左に大西洋があって南北アメリカ大陸。アラスカ山脈から伸びるアリューシャン列島に囲まれたベーリング海を伝ってユーラシア大陸に戻る。南の方はマレー半島からインドネシア伝ってそのままオーストラリア大陸、その下に南極大陸ねー」
二号がすらすらと地図を描きながら説明していく。残りの三人は黙ってその話の行く末を見守っている。
「でねー、もともとこの南北アメリカはアフリカとくっついてたんだよねー。ここ見てー。アフリカのギニア湾のところ、ほぼ直角に凹んでるでしょー。ここに南アメリカのブラジルがくっついてたんだねー」
「ピッタリはまりますね」
「それでー、この南アメリカの左肩ベネズエラとかコロンビアのある辺り、ここが北アメリカのメキシコ湾にガパッとハマってたんだねー」
「おおー、ハマるっすね!」
「それでここフロリダ半島が南北アメリカとアフリカの隙間にちょうどハマるというわけー」
なるほど、パズルのようにピッタリである。
「それでだー、問題はここからなんだけどー。ユーラシア大陸はもともとこのチベットの辺りで分割された二つの塊だったんだねー」
「はい?」
「北アメリカのフロリダ半島から上の東海岸の距離はアフリカ大陸の西岸の距離とほぼ同じでしょー? ここがくっついていたという事は即ち、アフリカ大陸の上辺と北アメリカ大陸の上辺がほぼ一直線になるという事なんだねー。そしてそこに北極海を挟んでユーラシア大陸の上辺、つまり北側が逆さにくっついていたという事なんだよねー」
「逆さー?」
地図に大きな矢印を書く二号の横で、姐御がその巨大な胸の前に腕を組んで頷いた。
「逆さの方が近いじゃない。ほら、航空図なんかで使う正距方位図法で見ると、北極海を挟んで逆さになるでしょ?」
「それねー。ここ、北アメリカの上にユーラシア大陸が逆さにつくことで、日本はなんとひっくり返った状態で北極付近に位置することになっちゃうんだねー。仙台の辺りは、現代では海から朝日が昇っているのに、ペルム紀では海に夕日が沈むことになるんだよねー」
「おおお~! すげえっす!」
「あれ? チベットで分割されてたインドはどこ行っちゃったの?」
「ああ、忘れてたー」
忘れるなよ……あんなデカいのに。
「アフリカの右下の方にマダガスカル島があるよねー。それがここのケニアやタンザニア辺りの引っ込んだところにちょうどハマってて、そのすぐ右にインド西岸のムンバイ辺りがくっついて、インド東岸のチェンナイの方にはなんと南極大陸とオーストラリアがくっついてたんだねー」
「中国とインド、めっちゃ遠いじゃないすか。てか、北端と南端じゃないすか」
「それが時間をかけて向かい合ってきて、ドカーンとぶつかったからヒマラヤ山脈ができたのよ」
「おー、なるほどー」
線がいっぱいになって、もはやどんな図なのか分からなくなってきている。
かといって赤や青の線が書けるわけではない、ここは砂浜である。
「これが前に出てきたプレートテクトニクスねー。地球の表面に存在するプレートが対流するマントルに乗って移動していくんだよねー」
「マントル?」
「あー、
「だから地震が多いのね」
「日本の国土は世界の面積の0.28%なのに、マグニチュード5以上の地震の10%が日本で起きてるからねー。マグニチュード6以上に絞れば20%が日本産だねー」
「流石 made in Japan、クオリティが違いますね」
特産品みたいに言うのはどうかと思うが。
「細かいのも入れたら全世界の20%の地震は日本発なんだよー」
「こんな小っちゃい国なのにねえ」
「コロ……」
今、絶対自分の事だと思ったよね、二号。
「で、結局ここ、どこなんすかね」
「沈む夕日が見えるねー」
「西側って事じゃない?」
「……わかんないねー」
「少なくとも、今まさに沈もうとしている夕日は、もう沈んでいますね」
「そうなの?」
「大気差というんですが、太陽からの光が地球の大気層に入ることで屈折して、見かけの高度が本当の高度より大きくなるんですよ。とっくに沈んでいる夕日を僕たちは大気差によって見ているわけです」
キュッと眼鏡のフレームを押し上げる教授はカッコいいんだが……これ『位置を特定する』話じゃなかったか?
「いいっすよ! 俺ら、科学部なんすから」
本当にこれでいいのか、科学部?
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