高速の近接戦闘

 クサリまで、あと四〇天文単位。

 地球ちきゅうから太陽たいようまでの距離きょりの、四〇倍。

 時間停止装置じかんていしそうちせたリカイネンは、いまだ健在けんざい。かくらんのための軍艦多数ぐんかんたすうも、多角的たかくてきにクサリへせまる。前線ぜんせんからはなれていて、ビームに対処可能たいしょかのう位置いちくろいメタリックなロボットに護衛ごえいされていた。

 あか防衛装置ぼうえいそうち、アカダルマとたたかっている。

 さらに後方こうほうたたずむ、衛星級えいせいきゅうマトクスター。全長、約一七〇〇キロメートル。巨大きょだい銀色ぎんいろ球体きゅうたい後方支援用こうほうしえんよう大質量だいしつりょうのため、高速戦闘こうそくせんとうはできない。かわりに、膨大ぼうだいなエネルギーを伝播でんぱさせることができる。

 そして最前線さいぜんせん

 人型ひとがたのDが操縦そうじゅうされている。

 人間の尺度しゃくどだと、巨大きょだいロボットに分類ぶんるいされる。

 うす黄色きいろ基調きちょうとした姿すがた。するどい見た目の追加装甲ついかそうこうまとう。頭部とうぶは、えるかみ逆立さかだっているような形状けいじょう角張かくばったマスクのような口元をしていた。

「この距離きょりで、命中まで5びょうか。とおいな。バーティバ、いけるか?」

 球形きゅうけいのコックピット。外は宇宙うちゅう

 ディスプレイの一五〇万キロメートルという表示ひょうじちかくに、緑色みどりいろ正六面体せいろくめんたいがある。肉眼にくがんでは見えない。レーダーの情報じょうほうをもとに、分かりやすくいろけられていた。

 最終目標さいしゅうもくひょうは、太陽系たいようけいとして疑似的ぎじてき表示ひょうじされている。

 すこしたいらな足元に立つ、くろ短髪たんぱつの男性。右手と左手に金属きんぞくぼうにぎって、微笑ほほえんでいた。

「一人なら、むずかしいかもしれません。しかし、たたかっているのは、ワタシだけではありません」

 コックピットは同じ形。

 銀髪ぎんぱつの男性が立つ。サイドがすこしびた髪型かみがた。同じく金属きんぞくぼうにぎり、微笑ほほえんでいた。

 あやつるのは、白色しろいろしゅとしたDファイブ。するどさを上に向けている。かみがすこしびたような形状けいじょう頭部とうぶ。口元があごの部分ぶぶんにかけて角張かくばっていた。

「オレも、そう思うぜ。いくか!」

承知しょうち!」

 同時どうじ加速かそくした。二機のDが光に包まれる。まずは、秒速一キロメートル。

 重力制御装置じゅうりょくせいぎょそうちにより、加速かそくによる負荷ふかはない。

 スラスターが光をはなつ。爆発的ばくはつてき推進力すいしんりょくた。加速かそくつづける。不規則ふきそくな動きをしつつも、一気いっき間合まあいをめた。途中とちゅうのアカダルマには目もくれない。

 秒速一〇万キロメートル。

 みどり防衛装置ぼうえいそうち、ミドリタンスがビームをはなった。

「オレかよ!」

 Dにビームは当たらなかった。すでに、Dファイブがふところもぐんでいる。

 すれちがいざまに、フォトンブレードが一閃いっせん。二〇メートルのやいば

 ひかりねつはなつミドリタンス。

「すみません。紅蓮ぐれんさん。不規則ふきそくな動きをしすぎました」

「いや。それでいいだろ。気にするな。かたぱしから破壊はかいするぞ」

 次のてきへと向かう、グレンとバーティバ。とがったひかりはなち、模様もようえがいているように宇宙うちゅうう。

 あま川銀河がわぎんが中心部ちゅしんぶちかく。星々ほしぼし密度みつどい。

 グレンのDが、足に発生はっせいさせたフォトンブレードで、ミドリタンスを撃墜げきつい

 次は、バーティバのDが、頭からフォトンブレードを発生はっせいさせてく。

 おたがいの背中せなかまもるようにたたかってはいない。

 ふたつのやいばが、次々つぎつぎひかりはなかせた。


「まずいわ! ミドリタンスの集団しゅうだんが」

「あいつら、完全かんぜんねらってやがるぞ。ふねを」

 あわてたようなこえの、ファリアとアイザック。

 クサリまで、あと二〇天文単位。

とおいな。ここからだと、わないぜ」

「ワタシたちは、眼前がんぜんてき排除はいじょしましょう」

 グレンとバーティバは、みどり防衛装置ぼうえいそうち一撃いちげきずつりつけた。

 ふねに向かったミドリタンスの数、二〇。

 隊列たいれつんでいて、うかつに近寄ちかよれない。荷電粒子砲かでんりゅうしほう連続発射れんぞくはっしゃ想定そうていされる。

「当たってくれないかしら」

 桜色さくらいろしゅとしたロボットから、ビームがはなたれた。するどい見た目のDエイト。二重装甲にじゅうそうこう展開てんかいしている。

便乗びんじょうしてってみたものの、ダメだ。一秒あればけられちまうな」

 緑色みどりいろ基調きちょうとした機体きたいからも、ビームがんでいた。

 Dトゥエンティーフォー。追加装甲ついかそうこうおおわれ、するどさが上に向く。

 ねらわれているふねは、ケイ素生物そせいぶつのジョウトゥアがるリカイネン。

 そのふねから、銀色ぎんいろ円盤えんばん発進はっしんした。全長、約五〇〇メートル。丸皿級まるざらきゅうプヘリアス。

 前に出る。数は、一〇。

 防御ぼうぎょける。鍋蓋なべぶたのように展開てんかいされたフォトンシールド。

 艦橋かんきょうすわるジョウトゥア。メガネをかけていた。三〇代の男性のように見える。

「やむをえません。いったん、下がります」

 言った瞬間しゅんかん、プヘリアスがひとつ爆発ばくはつした。

 時間差じかんさで二〇発放たれたビーム。退路たいろたれていた。護衛ごえいくろいロボットもる。

 ビームは貫通かんつうして、リカイネンにまで命中めいちゅう

「なんてこと。でも、チャンス!」

何匹なんびきやれるか?」

 ファリアとアイザックが、ミドリタンスに接近せっきんした。

 高速こうそくでフォトンブレードが貫通かんつうし、あっという撃墜げきついしていく。

 残り、八。

 ひとつが形を変え、とがっているほうをふねに向けた。四角推しかくすいちか姿すがた

 うしろで爆発ばくはつきて、急激きゅうげき加速かそくする。

 ほかのななつも変形へんけいした。

「なに、これ」

「こいつは、特攻とっこうか」

 二人は、分厚ぶあついフォトンウォールを展開てんかい防御ぼうぎょしつつ最短距離さいたんきょりてきう。ふたつを破壊はかい

 ビームははなたれなかった。

 よっつがプヘリアスにぶつかり、爆発ばくはつ。その穴から、ふたつがふねんだ。

 連続れんぞくこる爆発ばくはつ

 はるかとおくでたたかっているグレンが、まゆに力を入れる。

大丈夫だいじょうぶか? ジョウトゥア」

大丈夫だいじょうぶですが、だいじょうぶ、ではありません」

 巨大きょだいふねしずんでいない。

「どういうことですか? まさか、そこまで計算けいさんしていたというのですか」

 バーティバも、すこしけわしい表情ひょうじょうをしていた。

「まさかです。時間停止じかんていしそうちをねらわれ、はかいされました」

「ごめんなさい。わたくしのミスです」

ちがうな。連携れんけいにこだわったおれがわるい。気づくのがおくれた」

 ほかのふねにも、隊列たいれつんでかうミドリタンス。

 次々つぎつぎ襲撃しゅうげきされていく。

防御ぼうぎょてたのか? こんなとき、エリカならどうする?」

 たたかいながら、自分じぶんいかけるような言葉ことばはっするグレン。ミドリタンスの突破とっぱゆるさない。しかし、ふせぐことのできる範囲はんいかぎられる。

「リスクの分散ぶんさん裏目うらめに出るとは。來羅らいらさんなら、どのような指示しじを出すのでしょうか」

 バーティバも、ミドリタンスを次々つぎつぎ破壊はかいしていく。

 二人は、うしろのリカイネンをまもることができた。

 艦橋かんきょうすわるのは、一〇歳くらいに見える少年。帽子姿ぼうしすがたのアルヴァタが、すこし表情ひょうじょうゆるめる。

 だが、装置そうちんだほかのふね襲撃しゅうげきされ、数が足りなくなった。

 外部がいぶからおこなう予定よていの、星全体ほしぜんたい時間停止じかんていし。そのためのふだうしなった。

 ねらいは、クサリを停止ていしさせ、ムネンのネットワークも凍結とうけつ亜地球あちきゅう人々ひとびと解放かいほうすること。

 高速戦闘こうそくせんとうは、時間じかんのずれをこす。

 ワープでねらいどおりにあらわれるのは困難こんなん前線ぜんせんふねが、あまりはなれるわけにはいかなかった。

 ムネンを機能停止きのうていしさせる作戦さくせん失敗しっぱい

 大幅おおはばに数をらしたミドリタンス。防御ぼうぎょえ、クサリへと移動いどうしていく。

 クサリまで、あと四天文単位。

 約六億キロメートル。


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