領主一族を影で支える呪術師の娘。呪いを我が身で受けることを生業とするため、忌まれる存在でもある。そんな彼女が主一族の総領息子に恋をする。命を賭して、ただ一度だけ想いを遂げたいと望むが。切ない恋物語なれど、荒れ狂う海の唸りが、暗い嵐の空が、贄とされた女の怨みが、重苦しい呪術の返しが。切迫感のある描写が、折り重なる波濤のように、読み手の胸に迫る。恋愛ジャンルに違いはなくとも、歴史物やファンタジー小説の愛好者、また重厚な描写を好む諸氏にもおすすめしたい。
身分差の恋だけでなく、国に伝わる古い慣習までもが、惹かれ合う二人を引き裂きます。その慣習をどうにかしたいのに、どうにもできないヒーローの葛藤が丁寧に描写されており、読んでいるこちらまでもどかしくなりました。何もかも全てこなせる絵物語の王子様ではないからこそ、人間的で、先の展開にハラハラさせられます。だからこそ、最後の場面で、切なさが胸に溢れました。ちなみに……ラルスは名脇役だと思います。