5ー10

 音とともに、何もない空間から影が、闇が、広がる。

「渡さない。そう、忠告差し上げたと思いましたが……」

 黒い闇を背負い、現れたのはメイド姿のエリザベスだった。

「こうして貴女と相対するのも久しいですね。老体に鞭打ってこんな所までーー」

「ぎゃあぎゃあとうるさ小童こわっぱだね。百年前と変わりはしない。お前こそ若作りだろ、ベス」

 モルガナはエリザベスの言葉を遮り不敵に笑う。


 ❇︎


 広場、中央の方で何か騒がしい。

 ルニアはなぜ、周囲が静止していてご主人様も動かないのか、理解できず混乱していた。

 だがこれがご主人様の師である、モルガナが行なっていることは本能的に察知していた。

 つい先刻、鐘の音が鳴り響き、颯爽と天から白馬が現れ、甲冑姿の少女が舞い降りた。

 顔までは見えなかったがルニアは燦然と輝く銀髪を目に捉えていた。


 ルニアはご主人様の固く握る手を振りほどき、その場に残して駆けた。

 一度、後ろを振り返ると微動だにしないご主人様が一点を見つめている。

 ルニアは急いだ。

 こんな状況が長時間、続くわけもない。

 ルニアはこの異常事態が収束する前に行かなくてはと気がはやった。

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