第3話 『ゆっくり休んどき』

 しかし新山さんは僕の言葉を聞いたが反応は・・・


 「いっちゃん、疲れてるやろ。俺が行くわ!」


 そう言うと僕から新聞を受け取って恵我之荘へと行ってしまったのだ。


 「あ・・・。」


 僕は少し寂しそうな顔をしながら新山さんの行く姿を見届けるしかなかったのであった。少しガッカリした気持ちで事務所に入ると入口さんがいたので少し話をすることにした。


 「やあ!入口さんではございませんか!」


 「ぷっ!」


 いつもの調子で入口さんを笑わせると25年前についての話をした。


 「本当は僕が行きたかった・・・」


 「いっちゃん、さっきも別の場所に行ってたやん。休んどきや!」


 そうだった・・・僕は別の場所に新聞を届けに行ってたんだっけ。新山さんにはいつも気を遣わせてしまい申し訳ないなあと思う僕であった。


 「あのさー、入口さん!」


 「なんや?」


 「僕、25年前に戻りたいねん。」


 「またなんでや!?」


 「あの時僕は純粋だったんだ。何も疑わず本当に明るい子供だったのに気が付けば人の汚い部分も見てきたし、欲にまみれた輩もいる。もう世間を見てきてしまった僕は純粋になられへん。」


 「ああ・・・!成る程な。」


 「幼稚園時代が本当に良かった。あの頃に戻れるなら戻りたい・・・!」


 そして僕は机の上に頭を寝かすよう置いて入口さんと話の続きをする。


 「ちょっと横になるで」


 「あ、構わへんで!」


 「それで幼稚園の頃の僕な・・・」



 ――――-――――



 「あ、いっちゃん!大丈夫か?」


 「に、新山さん・・・僕寝ていたかな?」


 「何かすご~いイビキかいてたで。『ぐあおーっ!』ってな。疲れてたんやな!」


 「えへへ!」


 どうやら僕は少し眠っていたようだ。疲れていたかどうかは分からないが連日の疲労もあり、調子がよくなかったのも事実だ。


 「もう帰って休みや。」


 「大丈夫ですよ!寝たから大丈夫!」


 僕は寝たからこれからは頑張れそうだが恵我之荘へ行けなかったのが心残りであった。だが新山さんにはそれを言わずにいた。そして再び恵我之荘方面から新聞の入れ忘れの電話がかかることはこの日はもう無かった。


 「(今日はもう行けないから家で思い出を振り返るか。)」


 そう考えた僕は自宅で湯船に浸かりながら幼き25年前の日々を振り返る。風呂の中では過去を思い出しやすい。するとあの頃の思い出を振り返っているとちょっぴり眠気がやって来たのだ。


 「いつか・・・いつか・・・あの時代に・・・」


 気がつくと僕は湯船の中でグッスリと深い眠りについていた。

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