泥人形
◆
さらに、
「あとどれくらい歩くんだ?」
直後を歩いていた
「もう少し先です」
「ずいぶん用心深いやつだな」
「道は合っているんだろうな?」
「ご安心ください」
「おいおい大丈夫か。〈樹海〉でのたれ死ぬなんて、ごめんだぞ」
後方を歩いていたネイサンが、今すぐ帰りたそうにボソッと言った。
「君はどこの街の出身だ。金で
イェーツ卿が高齢の男に尋ねた。
「ご想像にお任せします。キヒヒッ」
「……気味の悪いやつだな」
サム――護衛の一人がつぶやいた。
◆
その後、一時間以上歩かされた一行の前に、ポッカリと開けた原っぱが突然現れた。
立ち止まった高齢の男が、一行を振り返った。
「では、交渉を始めるとしましょうか」
「お前かよ……」
ルイス――護衛の一人があきれた様子で言った。
ただの案内役と思っていただけに、全員が意表をつかれた。苦笑をもらしたり、冷淡な視線を送る者が数多くいた。
(この男、妙に嫌な感じがすると思ったが、身なりが汚いからじゃないな。あれだ。ゾンビとそっくりなんだ)
ネイサンが
「待て待て。私はこの国を代表してこの場に来ている。その……、君は何だ。案内役じゃないのか。もしかして、君が向こうの責任者なのか。君の言葉にどれだけの効力があると思っていいんだ」
「全面的に任されていると思ってもらってかまいません。みすぼらしい格好の私では、お気に召しませんか? あまり、人を見た目だけで判断しないほうがいいですよ。キヒヒッ」
「あんたが代表なら、なぜこんな〈樹海〉の奥深くまで連れてくる必要があった」
辺境伯が一歩前に進み出て言った。
「うちの商品は
小バカにする言動にムッとしながらも、男の指摘は事実だったため、辺境伯は何も言い返さなかった。
「辺境伯、落ち着きたまえ。まずは、君たちの言う
「では、さっそくご覧いただきましょう」
高齢の男がそう言うと、原っぱの先にある
おもむろに立ち上がったそれは、人のかたちをしていた。けれど、明らかに人ではない。全身を土でぬり固められた物体がユラユラと歩み寄ってくる。
前に進んでいるのが不思議なくらいだった。頭や両腕は
「彼らには
◆
泥人形を目にした面々は、あ然としたり、露骨に顔をしかめたりと、反応は様々だった。イェーツ卿が沈黙をやぶった。
「本当にそれが人間の代わりをつとめられるのかね?」
「人間の代わりを完全につとめるのは無理ですが、例えば、荷物を持って他人の後ろをついて歩かせるだとか、そういった単純な命令なら完璧にこなせます」
「誰かの指示がないと、何もしないということかね?」
「命令がなければ何もいたしません。ただ、お
イェーツ卿はこの不気味な物体と生活を共にする様子を想像したが、おぞましさから、すかさずそれを頭から振りはらった。辺境伯が話に割って入った。
「それは生きているのか?」
「先ほど申し上げた通り、これは人形にすぎません。ご要望にそえられなくなったら、ご自由に処分してもらってかまいません」
「荷物を運ぶ以外、どんなことができるんだ」
「単純な命令ならば、何でも。我々が新たな命令を与えなければ、同じことをくり返すことしかできませんが」
「追加料金を支払う必要があるわけですか?」
ダレルが口をはさんだ。
「そのようになります。ただ、人一人をお雇いになるより、ずっとお
「この
「
護衛たちは冗談を言い合いながらも、表情が一様にかたかった。
「急に暴れだして、人を襲う心配はないのかね?」
「命令にないことは行いませんので、ご安心を」
「裏を返せば、命令すれば人を襲えるということだな?」
「まあ、そうなりますか。キヒヒッ」
高齢の男は悪意に満ちた笑みをうかべた。
「人に襲いかかるようなモノは困るのだがね」
関わってはいけないものに関わってしまった。イェーツ卿は
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