貴族型ゾンビ(後)
◇
足止め役がいない難点はあるものの、一人二役で何とかやれるだろう。
ただ、魔法の発動は集中力を要求されるので、属性の変更にそれなりの時間を要する。反撃をふせぐには、
それよりも、本当にあれがゾンビかどうかが問題だ。頭がおかしいのは確かだけど、ゾンビらしさはあるようでない。
コートニーの『
やはり、誰かをここに連れて来てもらうしかない。コートニーを安全に逃がす方法はないかと、不用意に辺りを見回していると、
こちらに向かって『
男はねらいを定めることなく、デタラメに発動し続け、手加減している様子もない。まるで、魔法をおぼえたての子供がはしゃいでいるようだ。
もはや実力
しかし、男が狂ったように『炎弾』を乱発しているため、飛びだすタイミングがない。まだ距離があるものの、
魔法を無効化する考えが頭によぎるも、その時に飛びかかられたら
「裏から回り込みましょう」
石塀をつたって屋敷を半周した。そこから正面側をうかがうと、男はさっきまで僕らがいたところにいた。
このまま来た道を二人でかけ戻ることを思いつく。ただ、広場へ戻る道は、直線的で視界が開けている。
これでは魔法の
ふいに振り向いた男と目が合った。
走ってる。完全に走ってる。しかも、結構速い。ゾンビって走れるものなの!?
「ねえ、聞いてた話と全然違うんだけど!」
「思い出しました! ゾンビには
「その特徴は!」
「足が速いそうです!」
「きっとそれね!」
それからしばらく、屋敷の周囲で死にものぐるいの追いかけっこをした。
◆
ところ変わって、ストロングホールドの中央庁舎。
パトリックから『
「ストロングホールドの街はどうでしたか?」
「まだ収穫はないですが、大変勉強になっています」
「ちょっと
工業の街といえど、商品はレイヴンズヒルに入ってきている。職人の技術レベルは工房に立ち入らなければ確認できず、また、それを判断する知識もない。
ロイは当初の計画を脇に置いて、途中から『小麦の新たな
どういった食材が使われ、どんな料理が食べられているか。『食』に
「ところで、ウォルター達はどうしていますか?」
「聞いてみますか? 一時間くらい前に廃村に着いたって連絡がありましたけど」
スージーは手にした
『もしもし。今、何してますか? ……もしもし?』
『ごめんなさい。ちょっと今それどころじゃなくて』
コートニーの返事は早口で声に動揺が見える。普段の彼女からは想像もつかない様子で、
『何かあったんですか?』
『ちょうど今、ゾンビに追われてるところなの!』
「大変です! コートニーがゾンビに追われているみたいです!」
パトリックは
「……ウォルターは一緒じゃないんですか?」
「わかりません」
「君のほうから連絡してあげたらどうだ?」
「そうですね」
スージーはハッとした様子を見せて、今度はウォルターに連絡を入れ始める。
『ウォルターですか? コートニーがゾンビに追われているそうです!』
『大丈夫! 自分も一緒に追われてるから!』
声を張り上げていたものの、ウォルターの
「大丈夫です。ウォルターも一緒みたいです」
「……ゾンビに追われていることに変わりはないんだよね?」
「まあ、ウォルターが一緒なら問題ないでしょう」
ただのゾンビが相手なら、ウォルター一人で
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