蜃気楼

いつの間にか肌寒くなった夕暮れ。

時計を見るとまだ5時で、秋になった事実と、より一層の寒さをその身に感じた。

たった一か月前に見てた時間と同じ景色が見れない儚さに四季を感じた。

かと思えば赤くなった葉は時間の通り夕焼けに照らされているだけで実際はまだ青々しい命を燃やしていて、

かと思えば風に吹かれた葉は地に還るように落ちていった。


夏の終わりを感じるのはいつだろうか。

正しく肌寒くなった時だろうか。

少し厚着するようになる時だろうか。

おそらく人の数ほどそれはあって、夏が死んだときそれを実感するのだろう。


だとするなら夏が死んだ時が秋が始まりなのだろうか。

私は初秋を感じるのもまったく同じタイミングな気がする。


その曖昧な季節ほど四季の折々を強く意識できた。


読書が楽しくて、甘いものが美味しくて、重ね着が楽しくて、あとは。


金魚が死ぬのもそうなのかなと思い馳せる夕暮れ。

冷たい水槽には冷たい死体があるのは当然であり、やっぱり夏、いや秋は、冷たいなと感じる私も冷たかった。


夏は距離感を忘れて秋を演じていた。

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