第19話

何日も森に野宿してはルトを探すカイ。

カイについて回っては自分の存在を訴えるルト。



まるで、物語でも見ているような悲劇であった。


二人は目にみえて窶れていく。

二人の嘆きに共鳴するように、森には黒い雲がかかり、日の光をとざしている。




ブランの心配が当たってしまった。



カイが来てから一月が経とうかという日、

ブランは、ルトに声をかけた。


『ルト、、、、。もう諦めなよ、、、、。

どうして、カイに気づいてもらえないのか

わかってるだろ?



あいつがどんなにいいやつでも、

人間なんだよ。

成熟した大人の人間だ。

それに比べて、ルト、君は、、、、』


「わかってる!

わかってるの、、、。

こんななりしてても妖精だもの。

子供にしか見えない、、、わかってる。



でも、それでも、

カイは、

まだ私を必要としてくれてるもの!」


『ルト、、、、』


ブランは、ルトと、カイのことをもう少し見守ることにした。

これ以上傷が深くなる前に引き離すべきだ。

そう思っても、

二人を昔から知るブランには、

無理やり引き離すことはできなかった。



「ルト、、、」


「何?カイ、、」








「どうして、返事をしてくれないんだい?」


「あら?してるじゃないの」








「いつまで、かくれんぼしてるの?」


「隠れてなんてないわ?

目の前にいるでしょ?」








「わかった、脅かそうとしてるんだね?」


「よくわかったわね?

脅かそうとしていたのよ?」








「もう、十分驚いたよ」


「なに言ってるのよ、

脅かすのは失敗しちゃったわ?」









「だから、でておいで、、」


「まだ、気づいてくれないの?」








「それとも、僕が怖いのかな?」


「怖いわけないじゃない。

泣き虫のカイ?」








「僕がたくさん人を殺しちゃったから、、、、、」


「あなたが戦ったのは、

誰かを守るためじゃない。」








「僕に君といる資格が

なくなっちゃったかな」


「もともと資格なんていらないのよ。」








「ルト、君が好きだよ。」


「カイ、私も好きよ」








カイとルトが会えないまま、すれ違ったまま一年近くが経過した。

来る日も来る日も噛み合わない会話を続けていた。

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