第5話 花火大会
まだ、この前に行った遊園地の日焼けが残る夏休み中旬、吹奏楽コンクールの地区予選が行われてミツキの所属する吹奏楽部は見事金賞、全国大会へコマを進めることになった。
そして、それから2日後の学校近くの花火大会。
いつもは制服を着て明るい内に乗る列車を違う服を着て暗くなってから乗る列車に少し不思議な感覚を覚えながら駅へと降り立つ。
いつもは無人駅のこの駅も、今日ばかりは臨時の駅員さんが何人も改札やホームに立っている。
待合室にはもう既にミツキが待っていた水色の朝顔の柄が入った浴衣を着て、髪をアップにまとめた彼女はやはり、こちらが少し照れてしまうくらい可愛らしい。
いつもは、ポツポツと街路灯がある道には誘導灯や誘導員の人が立っていて、花火大会の会場へと道を作っている。
会場の土手の道には様々な出店が軒を連ねていて
THE祭り!という雰囲気である。
「そーだなぁ、全国大会出場祝いとして、なにかおごってあげるけど、なにが良い?」
「んー、ベビーカステラも捨てがたいしカキ氷も良いなぁ....、あー!迷う。」
まぁ、これだけの数の出店があれば迷うのは無理もないし、色々な物を食べたくなるよねその気持ちは痛いほど分かる。
結局、ミツキからベビーカステラとクレープをねだられて可愛らしいねだる仕草に耐えきれず、買ってあげたのは言うまでもないことである。
花火の打上げは、河原だけど人も多くて入れそうもないので、学校そばの小高い丘の上で見ることにした。
河を挟んで向かい側の出店もない所に、誰もいるはずがなく辺りは鈴虫が鳴いて、向こう岸から人のこえが微かに聞こえてくる素晴らしく、静かで心地の良い風もふいてきて草が揺れる音が加わる、これを逃してなるものか!と気持ちが焦ってまたも勝手に口が動き出す。
「花火、楽しみだね~。でも、花火の前に伝えたいことがあるんだ!遊園地の時も、この前の駅でも言おうとしたんだけど、なんかタイミングが悪くて....。 ミツキ!お前の事が「ピューーー、ッドッカァーーーン」」
川の中州から打ち上げられた花火は、何回目かの告白をまたしても音と共にさらっていくのであった。
一番最初に上がった花火を皮切りに、続々と炎の華が咲いてゆく。
そして、またしても上手くいかなかった言葉を飲み込んで様々な色をした夜の花々に目を奪われていくのであった。
十五発くらい打ち上がった後に、花火が止まり
向こう岸からここまではっきり聞こえるほどの拍手が起こる
「本日は御来場下さいまして、ありがとうございます!今年で第53回大会となりました那珂川花火大会開始でございます!
プログラム一番、オープニングに続きまして、プログラム二番、三号早打ち競技に移ります。提供は鶴屋旅館です。それでは、どうぞ。」
花火大会独特のアナウンスが、聞こえてきて花火が打ち上がる、ドンッドンッドドドド早打ちと紹介されただけあって、小型の花火が次々に空へ上がっては消えて、たまに5発位がドドドドドと続けて咲くことで一瞬の明るさをもたらしていく。
プログラムはどんどんと進んでいって、最後のプログラムが読み上げられた。
「さぁ、プログラムも残すところ残り一種目となりました続いてプログラム15番、一尺大輪の畑です!
提供は那須ふれあい牧場がお送りします!」
何かで読んだ、花火の知識で覚えていた1尺玉、高さは330mまで打ち上がって花火の大きさは約300mの大きな華が開くという事。川の中州でピンク色の手持ち花火がグルグルと回っている、花火師さんの打ち上げの合図だろうか?
《ピューーーーーーッ、ドッガァーーーーン》
今までと比べ物にならないくらいの大きさの花火が打ち上がって、キラキラと残りの花びらが空を降りてゆく、明るくなった周りの景色の中に美月が佇んでその瞳には名残の花火が降りてゆく光が映っている、小高い丘に二人佇んでいると美月が輝いて見えて、名前のように美しい月のように感じる時がある
もっともその中に可憐さ可愛さが宿っているのだけれども。
花火大会が終わって丘を下ってゆく、暗いので転ばないようにしっかりと手を繋いで丘を下りると駅へと続く道には人でごった返していて、やっとの思いで駅へと着いて、列車に乗れたのは花火大会終了から1時間後のことだった。
帰りの列車の中、今日も上手くいかなったと振り返る。
やっぱり、悔しいなんで成功しないんだろ?いつもタイミングが悪い、次こそはと思いが又しても積もっていく。
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