第19話 イルガード、本部研修
料理屋での1日は忙しくも充実していて楽しい。。
楽しい時間は過ぎるのが早いからか、イルガードの入団が決まってからあっという間に3日が過ぎた。
いつものようにクレアの朝市の買い出しに付き合い、料理屋に帰ってくる。
私はそのまま自室に戻り、出かける準備を始める。
「これでよし。っと……」
自室で忘れ物がないかを確認して、鞄の口を閉じる。
下の料理屋のフロアに降りると、フェヴィルとクレアがお昼の営業の準備をしていた。
「おっメイル。もう行くのか?」
厨房で仕込みをしているフェヴィルから声を掛けられる。
「はい。そろそろ出ます」
「気を付けていくんだよ。あと、これ持ってきな」
厨房の奥からクレアが出てきて、袋を渡される。
「お弁当だよ。お昼ご飯に食べな」
出来立てなのだろう。袋がまだ少し温かかった。
「ありがとう。じゃあ、行ってきます」
「「いってらっしゃい」」
フェヴィルとクレアの見送りを背に、イルガード本部へと向かい始める。
そう。今日から待ちに待ったイルガードの本部研修だ。
この研修を受けなけれな、イルガードとしての活動が認められない。
イルガードの本部に着き、扉を開く。
「あっメイルさん! お待ちしてました!」
入ってすぐの受付に居るリーラが声を掛けてくれる。
「おはようリーラ。どこに行けばいいかな?」
感嘆に挨拶をして、リーラに問いかける。
研修の案内には、当日受付で指示をもらうようにと書いてあった。
「はい。少々お待ちを。先輩~メイルさんが来られました~!」
リーラは、受付の裏にある事務所に、誰かを呼びにいったようだ。
「メイルさん。おはようございます」
待つこと数十秒、裏からアマリアが出てきた。
「おはようございます」
「では、行きましょうか。私についてきてください」
「はい」
そういうと、受付から出たアマリアはすぐ近くの階段を上がり始める。
私も、アマリアの後についていく。
着いた場所は2階の会議室と書かれた部屋だった。
「中にどうぞ。資料の置いてある席に座って下さい」
会議室には前方に黒板があり、それと並行に長机が3列並べられている。
その中央の列一番前の席に、資料が置かれていた。
私はその席に座り、鞄から筆記用具を出す。
「それでは。本部研修を始めます。研修は私、アマリアとリーラが交代で担当します」
「お願いします」
いよいよ本部研修が始まる。
初日は、イルガードの成り立ちや活動の内容についてだった。
アマリアが説明を始める。
「イルガードは、国王イルド陛下を慕うスプリンに住む民が集まり作られた自治組織です。イルド国王が即位し、ハルシュ軍が民へ介入することを最小限に抑える号令が出されました。それまでは、街の自治も軍が介入をしていたのですが、イルド国王は、それらを民に任せる方針を打ち出し、今のイルガードが作られるきっかけになりました」
街に出てわかった事だが、日常生活の中で軍人を見ることが少ない。イルドは、「国を守るのが軍人。街を守るのは民」と言っていたが、イルドは、民を信頼し街を任せている。そして、その信頼を受けて、民はイルドを慕い、街を守っているのだ。イルドが民に愛される理由が分かった気がした。
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