第64話 冷たい雨

冷たい雨に打たれながら

ゆるゆる走る帰り道

いつもより流れの早い川の水が

深まる夜へ叩きつける音


かさを増していくその川が

澱んでくのがつぶさに見えて

その常ならない表情に

ペダルを踏む足に力を込めた


まるでハンドルに縋るように

かじかむ指で強く握れば

軋むブレーキの耳障りな響き

もうこの体は冷え切っている


ほろりほどけた涙は全部

休みなく降る雨のせいにして

ただ暗がりを走り抜ける

冷たくも潔いこの雨の中を







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