第33話 ただ暑い夏の日に
まぶしい光の下を無心に
ただひたすら歩いて
道に転がるセミの死骸を
ぐしゃりと踏みつぶし
この抜け殻を悼む思いを
軽く笑い飛ばせば
カラカラに渇いた目から
せつなさがあふれ出す
照り返すアスファルトの熱が
身体を灼きつくして
この暑さに麻痺した感覚が
ぶすりと胸を突き刺し
くすぶり続ける心の奥に
固くカギをかければ
甘い香りを漂わせながら
じわり血が滲みはじめる
どう考えてもこの夏は
あまりにも暑すぎるから
現実が幻に食い尽くされても
きっと誰も気づきやしない
どう考えてもこの夏は
あまりにも残酷すぎるから
現実を幻だと信じ込んでみても
きっと誰もとがめやしない
まぶしい光の下を無心に
ただひたすら歩いて
失った命の営みを
掌で握りつぶして
キラキラこぼれる夏の欠片に
儚い夢かざせば
カラカラに渇いた心から
涙があふれ出す
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます