想うだけなら綺麗なのに



貴方と出逢って、私は変わったとおもう。毎朝起きるのが苦痛ではなくなった。仕事に行くことが楽しみになった。貴方に逢えるから。

会話することがなくても、姿を見ることができて、声を聞くことができる。楽しそうに過ごす姿を見るだけで、私は確かにしあわせだった。

けれど、仲良くなって、距離が縮まる毎に無意識に深まっていく欲求が徐々に私自身を苦しめた。





『もっと声を聞きたい』

『もっと近くに居たい』

『もっと私を見て欲しい』






日に日に増していく欲求は、いまではもう自分の心からあふれ出して止められなくなっていて。



決して綺麗ではないそれらの感情を、私は嫌悪していた。




自覚している以上に、欲深な自分自身に嫌気がさす。

外に出ると、青い空が広がっていた。気分とは裏腹に高く澄んでいる空を見て、余計にかなしくなる。世界はこんなにも綺麗なのに、自分の矮小さが嫌と言うほど際立って、それが哀しい。





どんな気持ちだって、想うだけなら綺麗なのに。






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