真矢 夢のメッセージ

気がつくと見覚えのある場所にいた。


しかし見覚えがあるだけでどこかは分からない、プレハブ小屋を大きくしたような殺風景な建物、使わなくなった倉庫かもしれない。ここで初めて根本的な疑問が浮かぶ。


(なんでここにいるんだ?)


確か手紙を見た記憶がある、そこからは曖昧だ。思い出そうと記憶を辿っていると後ろから足音が聞こえる。

振り向いて姿を確認すると、白衣を着た長髪の男が倉庫に入ってきていた。

お前は誰だと聞こうとするが、声が出ない。代わりに意識せずに勝手に口が開く。


「おかえり、どうだった?」


白衣の男は答える。


「まあまあかな、ところで早く目を覚ました方がいいよ」


そう言われてどきりとする、これは現実じゃない、自分の意識と体が分断されたような感覚も身に覚えがある。


「あとヒントだ、ここに来るといいよ」


ここはどこだと聞こうとするがやはり声が出ない、代わりに自分がもう1度話す。


「おい俺、あんまり待たせるなよ」


誰をだ、そう思うが声も出ずに、そのまま意識が離れていく。








「また夢……」


今度こそ意識を戻すと、家の前で横になっていた。手紙を開いてそのまま寝たのだろう。そして手にはその手紙が握られていた。


手紙を見てみると封がされている、確かに封を切ったはずだ。裏も確認するがそれらしき後はない、きれいに塞がっている。


―――何がどうなってる?


繰り返し見るおかしな夢、しかもそれがはっきり記憶に残る。そして破れても元に戻る手紙、どれも偶然とは思えない。何か理由があるはずだ。


「あとヒントだ、ここに来るといいよ」


白衣の男の言葉を思い出す、"ここ"とは一体どこを指すのか。必死に記憶を辿る。使われなくなった倉庫、知っている場所、条件は2つだけだった。


立ち上がり、家の中に戻る。

朝食もそのままに本棚を漁る。探すのは街の地図、まずは目星をつけるためだ。


程なくして地図を見つける、去年のものだがある程度は使えるはずだ。

机の上に地図を開く、細かに記載された情報達の中から、倉庫、またはそれに近い建物を探す。



記憶を辿りながら探す、30分ほど経ったところで1通り探し終える。

知っている場所、倉庫のような建物、この二つの条件に当てはまる建物は3つあった。

1つは郊外の廃工場の一部の倉庫、県外へ行く途中に何度か見たことがあり、広さも申し分ない。


2つはデパートの立体駐車場、駐車場には何も置かれていないし、広さも十分で条件に合っている。


そして最後は、昔通っていた小学校の体育館、考えたくはないが、夢での世界が本当に荒廃しているのなら学校というシステムは終わっていてもおかしくはない。


もう1度行くところを見直す、1番から順番に回っていくのが妥当だった。学校は夕方頃に行く方がいいだろうし、丁度よかった。

地図をポケットに押し込め、スマホアプリの地図にもマークをする。

学生鞄に財布を入れて、ついでに水筒も入れる。


学校をサボって探索を始めるのは、少しだけわくわくした。

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