第2話  「セイタカアワダチソウさん」の逆襲

 やましんの家は、

 人間が山の上を切り開いて作った土地に建っています。

 そのせいもあって、

 ほっておくと、「雑草」さんやら「セイタカアワダチソウ」さんやら、いろんなのがいっぱい生えます。

 毎年同じものとは限りません。

 ひと時バット栄えて、消えてしまうものもあるようです。

「セイタカアワダチソウ」さんは、他の植物の繁殖を抑えてしまう力もあるようですが、人間様は容赦なく引っこ抜きます。

 ぼくは、ぼつぼつ草とりするのは、体力的にも精神的にも無理なのものですから、だいたいは業者様にお願いします。

 すると、そうしたお庭を占領した「雑草」さんたちも、どうやら、なにかを、感じるらしいのです。

「ねえねえ、やましんさん。あすあたり、草取りのおじさんが来るのではないですか?」

 「セイタカアワダチソウ」さんが言いました。

「ほう、どうして?」

「だって、そんな気配を感じるのですもの。」

「そうなのか。」

「はい。ねえ、やましんさん。考えても見てください。私たちは、別に悪い事は何もしておりません。花粉症の原因とかと疑われた時期もありましたが、そうではないと決まっております。ほかに、人様を襲ったりもしません。食べたりもしません。確かに背は高くなりますが、きれいな花も咲かせます。この際、おいておいてくださいませ。」

「ううん。でも、ご近所から苦情がくるし、景観も良くないし、精神衛生上もよくないしなあ。」

「まあまあ、つれないことを。随分長くほっておいてくださってるじゃあありませんか。」

「君たちは、外来有害種だよ。まあ、逆の現象も起こっているらしいけど、どちらにしても、ここは僕のお庭だからね。決めるのはぼく。」

「まあ、人間は、こどもたちには『雑草のように、元気でたくましく、ずうずうしく生きろと教えるくせに、いざ子供たちが「ぼくは雑草になる」とか言って定職に就こうとしなかったり、役者や芸術家になろう、とかしたらば、すごく反抗なさいますでしょう。市役所とかで職員さんをいつも叱りつけるのに、子供さんには、就職は公務員が良いと言ってみたり。おかしいです。」

「それは、まあ、親心というのもさ。」

「矛盾です。ならば、わたくしたちも、対抗策を取らなければ。すぐには無理ですが、やがて強力な毒を備えます。人間が一呼吸したら、死んでしまうような。それから、今は種子が重たいのですが、これからは軽量化して、強力な推進力を得て、世界中に届くようになります。そうして、この強い意志を、子孫たちに引き継ぐのですわ。見てて御覧なさい。やがて世界は恐怖の海に飲み込まれますわ。ほほほほほ・・・・・」

「ふふふふふ・・・・・」

「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ・・・・・」

「けけけえけけけ・・・・・・」

「ギョワワワワワワワワ・・・・・・」

「ククククククククク・・・・・」

 周囲の「セイタカアワダチソウ」さんたちが、みなで不気味な笑い声を上げました。

「む、判決を言い渡します!」

 ぼくはきっぱりと言いました。

「全員死刑。おわり。」

 ぼくは、家の中に入りました。


 その夜。

 真夜中。

 一人で、机で転寝していると、お庭の方が

なにやらざわざわします。

 部屋の薄明かりに照らされたお庭から、

「セイタカアワダチソウ」さんたちが、空に向かって上昇してゆくではありませんか。

 ぼくはびっくりして、お庭に出ました。

「うわあ・・・・」

 庭中に生えていた、「セイタカアワダチソウ」さんたちが、どんどん宙に向かって出発してゆくのです。

「やましんさま。仲直りしましょう。一緒に行きませんか?」

 昼間の「セイタカアワダチソウ」さんが誘ってくれます。

 ぼくは、一緒に行こうと思いました。

 それで、たぶん「彼女」と手を取り合いました。

 ぼくの体は、ふわりと浮かび、そうしてどんどん大地から離れてゆくのです。


 まあ、どちらにしても、こうして僕のお庭は、とりあえず、きれいになりました。

         🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸🌸


『せいたかあわだちそうさんと、手を繋いで 昇天に夢中かな?』




















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