アビリティリング発動!
でも一人だけ、諦めていない者がいた。
『何を勘違いしている』
ユウだ。彼のこの声から、諦める、という意思は全く感じられなかった。むしろ、絶対に相手を倒す、という気持ちを感じられた。
『俺は別に、命令するために、この巨大要塞を生物にしたわけじゃない』
『な、なんだと!?』
ど、どういうこと?
『機械仕掛け』の命令絶対服従能力で、要塞に地球から遠ざかるように命令するために、生物化させたんじゃないの?
『マーザ、お前はガイア理論を知っているか?』
ユウが唐突に、そんなことを言い出す。
ガイア理論?
聞きなれない言葉に、私の脳内にはてなマークが浮かび上がる。
この理論について教えてくれたのは、意外な人物だった。
「確か、地球と生物が互いに関係し合い、環境を作り上げていることだったはずだ!」
熱血漫画やバトル漫画しか読んでなさそうな車田くんが、ガイア理論と言う難しそうな理論について説明した。そのことに私は驚く。
「あら、車田くんにしては博識ですわね」
答えた車田くんを氷華ちゃんが褒める。
「この前、ユウと一緒に読んだ漫画に書いてあった!」
車田くんは意気揚々に答える。車田くんらしい。
『細かな説明は端折るが、要は惑星とそこに住む生物を、一つの大きな生命体として見なす理論だ。……つまりだ。今、一兆のエンダーと巨大要塞は、一心同体となったというわけだ』
『そ、それがどうしたというのだ!!』
『……お前達全員を一度に封じるには、この方法しか思いつかなかったのでな』
封じる? 倒すじゃなくて、封じる?
どういうことだろうと思ったけど、その言葉の意味はすぐに分かった。
『アビリティリング発動! 異空間フィールド展開!!』
ユウが叫んだ。
この言葉で分かった。ユウがエンダー星を生物に変えたのは、アビリティリングを要塞に装着させるためだったのだ。
だって、リングを使用できるのは生物だけだから。
異空間フィールドに、要塞ごとエンダー達を引き込む。ユウは最初からこれを狙っていたんだ。
『マーザ! お前はさっき、この戦いを制限時間三十分のゲームといったな! 悪いが、制限時間を延長させてもらうぞ!! 俺と要塞、どちらかが死ぬか気絶するまで、この戦いは終わらない!!』
『貴様ぁああああ――!』
そこで、音声は途絶えた。 空を見ると、黒い点……エンダー星が消失していた。
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