初陣は誰が行く

「まずは誰が行きます?」 


 そう言う氷華ちゃん。 


 対戦する順番、大将戦を除いた四戦の順番は、敵を見てから決めると皆で話し合っていた。敵のしゃべり方や体格を把握し、相手がどんな性格、能力を持っているか予測し、対戦カードを決める。そういう手筈だった。 


 だけど、相手との距離は五十メートル以上離れている。おまけに敵は全員、ローブを身に纏っている。これでは何も分からない。分かったことはただ一つ、相手の一人は声が大きいことだけ。


「よし、オレが行く!」 


 車田くんが元気よく手を挙げる。反対する理由がない私も、車田くんがいいと思った。


「いや、初陣は空に行ってもらう」 


 だが反対する者がいた。ユウだ。しかもユウはよりによって一番年下の空くんを初戦で戦わせるという。


「何でだ!」 


 私も車田くんと同じ意見だ。どうしてなのか説明してほしい。


「考えてもみろ。敵は、わざわざDCに映像を送り、俺達を指名してきた。だとしたら俺達の能力がどんなものかも調べているはず」

「私達の能力に対して、何かしらの対策をしていると?」

「おそらくな」 


 氷華ちゃんの問いにユウは簡素に答える。 

 能力の対策、確かにその可能性は十分にあった。


「そこで空の出番だ。空は自分の能力を、味方である俺達にも悟られないように気を配っていた。だとしたら、敵も空の能力を理解していないはずだ」

「でもそれなら、私の方が良いんじゃない? 私はエンダーと戦うのは初めてだから、敵も知らないんじゃ」

「空も言っていただろう。スパイのことを。DCにエンダーの仲間がいる可能性もあるから、やつではダメだ。それに最初に話し合って決めただろ。やつで、お前は大将戦だ」 


 ユウの言う通り、私は大将戦を担っている。 

 戦闘経験の浅い私を最後に回して、残りの四人で三勝を勝ち取る。これは氷華ちゃんが提案したアイディアだ。


「そういうわけだ。空、初戦を頼めるか? 最初に勝って、流れをこっちに持ち込みたい」

「……分かった」 


 そう頷いた空くんは、湖の底へと下りていた。

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