謎の能力
一体何が起こったのだろう。
空くんの能力で、船が無事なのは分かる。でも何がどう作用したのか、分からない。
「不意打ちか。やはり、罠だったか」
船のてっぺんで鎮座していたユウが降りてくる。
私はユウの元に駆け寄り、彼に質問する。
「ねえ、ユウ。空くんの能力って一体何なの?」
ユウは腕を組み、しばらく無言の後に口を開いた。
「……これは俺の推測だが、ブラックホールの一種だと思う」
「ブラックホール?」
ブラックホールとは、宇宙にある、何でも吸い込んでしまうもの。光さえも逃れられないらしい。
「今の敵の攻撃をブラックホールで吸収し、消滅させた。俺はそう考えている」
「ブラックホールか……」
ブラックホールを発生させ、溶岩を飲み込んだ。なるほど、合点がいく。
でも私達の出した結論に待ったと言う者が現れた。
「一概にそうとも言い切れませんわよ」
水使いの風吹氷華ちゃんだ。日焼け防止のためか、つばの広い麦わら帽子を被っている。
「それはどういう意味だ」
氷華ちゃんが横目で空くんを見ながら、答えた。
「わたくし、常盤くんと一度組み手をしたことがあるのです。あ、現実世界ではなく、異空間フィールド内での話ですわ。それで彼と戦ったのですが……あの時、私の能力が発動しなかったのですわ」
「能力が発動できない?」
氷華ちゃんが言うには、空くんとの戦闘の際、指から水鉄砲を出そうとしたらしい。NEX第一試合で、車田くんとの試合で使った、あの強力な水鉄砲だ。
だが、彼女が水を出そうとしても、指から一滴の水も出てこなかったという。
「アビリティリングが故障してたのではないのか?」
「いえ、わたくしもそう思って社長さんにリングを診てもらいましたが、どこにも壊れていなかったですわ」
どこも壊れていない。つまり、何者かによって能力を封じられた可能性があるということだ。
能力の無効化、それが空くんの能力?
「なんだ、空の話か! だったら俺にもあるぞ!」
ランニングシャツで短パンの車田くんが、大きな声で議論に参加してきた。
「俺も空に練習相手になってもらったことがあったんだが、その時俺が空に向かって出した攻撃が、そのまま跳ね返ってきたんだ!」
「跳ね返ってきた?」
私が聞き返すと、彼は元気よく返事をした。
「おう! 投げた野球ボールが壁にぶつかって戻ってきたみたいにな!」
分かりやすい例えをありがとう車田くん。でもこれで謎が大きくなったよ。
「砲撃の消滅、能力の鎮圧、攻撃反射か」
ユウが親指人差し指薬指の三本を立てる。
私は少し考えてみたけど、全然分からなかった。
「……それぞれの勝負の時に、別のアビリティリングを使った可能性は?」
ユウが二人に聞く。
なるほど。アビリティリングの個によって、能力は変わってくる。それぞれの状況で、異なるリングを使っていたのなら、辻褄が合う。
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