秘密を共有する友達

「イエ――」

「ちょ、ちょっとユウ!?」 


 私は慌ててユウの口を塞ぐ。今絶対、イエスと言おうとしたよね。 


 ユウは私が抑えていた手を振りほどく。


「やつで、おそらくこの女に下手な嘘は通じない。真実を語った方がいい」

「で、でも……」

「心配するな。何かあっても、俺が守る」 


 ユウが真剣な眼差しで私を見る。彼の言葉に嘘は無かった。


「ふふふ、仲がよろしいのですね。ご心配なく。アナタ方の答えが何であれ、私は他言しません。約束しますわ」 


 吹雪さんが私達を見て微笑む。 

 私は彼女の笑顔を見て考えた。彼女になら話しても大丈夫ではないかと。 


 深呼吸をして、そして言い放った。


「うん。私のリングは普通のとは違う。現実世界でも使えるの」 


 私は吹雪さんに話した。『妄想創造』が異空間フィールドだけでなく、現実でも使えることを。その能力を駆使して、炎の刀を実体化させて、乱入者を倒したことを。


「なるほど。……凩さんは何故自分のリングが現実でも使用できるか、分かりますか?」 


 私は首を横に振る。


「どうしてかは私にも分からないの。……私のリングも元々は異空間フィールド限定だったんだけど、ある日突然現実でも使えるようになってて」 


 私の『妄想創造』が現実化したのは、私が子供の頃の話だ。当時のことは、また後で話す。


「そうですか……」 


 そう呟くと、吹雪さんは自身のリングを装着する。そして右手の中指・薬指・小指を曲げて拳銃の形にする。


「shoot」 


 大会で使った技を、彼女は使おうとした。車田くんに向けて撃った水鉄砲を。 


 でも何も起こらなかった。彼女の指からは、一滴の水も出てこなかった。


「やはりわたくしのリングは現実では使えないようですね」 


 吹雪さんは一瞬がっかりしたような顔になったが、すぐに私達に笑顔を向けた。


「ありがとうございます、凩さん。私のことを信用し、真実を話してくださって」

「いいですよ。吹雪さんなら大丈夫かなって思ったから」

「そうですか。……ところで、私のことは氷華と呼んでくださいませんか? あなた方とはもっと親密な関係になりたいので」

「それじゃあ、私のこともやつでって呼んでよ、氷華ちゃん。あ、ユウのことも下の名前でいいよ」

「ええ、そうさせていただきますわ。これからよろしく、やつでさん、ユウさん」 


 吹雪さん改め、氷華ちゃん。彼女とは仲良く慣れそうだ。

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