クールな男 VS 燃える男

「不動ユウ! 今こそ戦いの時! オレと勝負だ!!」 


 私は物陰から声のする方を覗く。 


 そこにはユウともう一人、男が仁王立ちしていた。


 私はその男に見覚えがあった。 

 名前は確か、車田烈。NEX一回戦第一試合を戦った、沖縄出身の炎の能力者だ。


「御託はいい。さっさと訓練を始めるぞ」

「ノリ悪いなぁユウは! こういうのは気分が大事なのに!! 分からねーかな !! 主人公とライバルとの真剣勝負! 燃える王道展開だろ!?」

「分からん」 


 私も状況がよく理解できなかった。 

 ユウは同僚に呼ばれたと言っていたが、車田くんがその同僚なのだろうか? それに訓練って、何のことだろう?


「まあ、いいや! 始めようぜ、ユウ!」

「……来い」 


 そう言うと二人はポケットからアビリティリングを取り出し、装着する。 


 なんだ、訓練ってアビリティリングの能力バトルのこと……て、あれ!?


「あ! あのリング――」 


 私は漏れそうになった声を慌てて抑える。 


 あのユウが使っているリング。 

 間違いない。あれは私の、『妄想想像』のリングだ。 

 なんで、ユウがあのリングを……。リングは確か、あの乱入者を倒した後で返して貰ったはず……。


「う、頭が……」 


 また頭痛だ。エンダーという単語が思い浮かんだ時と同じ頭痛。


「行くぞ! バトル開始だ!!」 


 車田くんの声が響き、余計に頭が痛くなる。


「来い、『刀爆』」 


 ユウはホルダーからカードを取り出し、炎の刀を実体化させる。 

 カードホルダーもユウが持っていたなんて。 


 って、ちょっとユウ!? どうして能力を使っているの!? 


 まだ二人は異空間フィールドを展開していない。それなのにユウは刀爆を実体化させた。つまり、この光景は現実だ。 

 リングの実体は私とユウだけの秘密なのに。それを車田くんの前で使うなんて……。


「いつ見てもカッコいいよな、燃える剣!」 


 あれ、車田くん……あまり驚いていない? 

 てか、『いつも見ても』ってどういうこと? 

 私は疑問に思った。 でも、その答えはすぐに分かった。


「それじゃあオレも行くぜ!! うぉおおおお! 燃え上がれオレの拳! 火炎拳!!」 


 車田くんが唸ると、彼の拳が燃え上がった。 


 それを見て私は確信した。車田くんのアビリティリングも実体化するんだ。


「勝負だ!」 


 燃える拳で車田くんはユウに殴りかかる。 

 ユウは相手の拳を紙一重でかわしたり、刀爆で受け流したり防御する。 

 車田くんが拳を振るう度に、火の粉が舞う。私のいる物陰にまで熱気が伝わってくる。


「へへへ、やるな! ユウ! だったらこれでどうだ! いくぜ! 新技だ!!」

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