第23話 大魔の森

「大魔の森からやって来る大量の魔物の討伐とその補助を依頼したいのです」


 冒険者ギルドの使いとしてやって来たイノは、緊迫した様子でライズに依頼を申し込んできた。


「それは大魔の森の魔物の繁殖期に関連する依頼という事ですね?」


「ええ、おっしゃるとおりです」


 ライズの問いに対してイノはゆっくりとうなづいた。


「しかし魔物の繁殖期は毎年あります。今まではどうしていたんですか?」


 イノの様子から見て単に戦力を追加したいだけでは無いと感じたライズは、イノに真意を問う。


「これまでは周辺の町の冒険者ギルドと連携して冒険者を総動員して魔物狩りを行なっていました。それに今年からはライズさんの使役する魔物が森の間引きを手伝ってくださる約束でしたから、例年よりも魔物の討伐ペースも早く、安全な魔物狩りになると考えられていたのです。しかし複数の冒険者達より今年は例年に比べてかなり魔物数が多いとの報告を受けたのです」


「ふむ」


 イノの言葉から状況を吟味するライズ。


(確かにドラゴンもそんな事を言っていたよなぁ)


「あ、いえ、ライズさんを疑っているわけではありませんよ。ライズさんのドラゴンが毎日大魔の森に飛んでいく姿は城壁の衛兵が見ていますし、町の名物として住人や旅人達にも人気ですから」


(そうだったのか)


 ライズの思案した顔をみて、彼が冒険者ギルドと結んだ定期的な魔物の間引きの約束をサボっていると勘違いしているとイノは判断したらしく、彼女は即座に訂正の言葉を述べた。


 最も、ライズにとっては自分のドラゴンが観光名所みたいになっている事の方が驚いたのだが。


(多少は町の人達にも受けいれられているって事かな?)


「それにライズさんには毎日証拠として冒険者ギルドに魔物の素材を卸してもらっていますからね。欲を言えば不足している素材を狙って間引きをしてくださると有りがたいのですが」


「獲ってくるのはドラゴンですからね。ドラゴンには雑魚の魔物なんてどれも同じでいちいち選んだりしませんよ。まぁ味の好みなのか、好んで食べる魔物が何種類か居るみたいですけど」


「ああ、そういうことだったんですね。どうりで特定の魔物の素材が多いと思いました」


 かねてより気になっていた疑問が解消された事で、小さく笑みを浮かべるイノ。


(そっか、ライズさんの所のドラゴンって熊が好きなのね)


 実際には熊の魔物は体が大きく食いでがあるから好きなのだが、この時点での彼女には汁由も無かった。


「そういう訳ですので、こちらの日程に合わせて回復魔法の使える魔物と即戦力になる魔物、特に遠距離からの攻撃が可能な魔物を優先的に使えるようにして置いてください。作戦の詳細はギルド長が直接するとの事ですので、今日か明日の午後に

冒険者ギルドに来ていただけますか?」


「分かりました。魔物達のスケジュールを調整したらそちらにうかがいます」


「ありがとうございます。魔物狩りの前後にこの町の住人からの依頼が重なる場合、依頼人にギルドと町からの緊急指名だとお伝えいただければ全ての責任は我々が持ちますのでご安心ください」


 それだけ言うと、イノは冒険者ギルドへと戻ってゆく。

 せめて水だけでも出そうとしたライズだったが、彼女も忙しい身の上らしく、やんわりと拒絶されてしまった。


「まだ打ち解けてくれていないのか、それとも元からああなのか悩むところだなぁ」


「両方じゃないの?」


 とは帰らずに残っていたレティの弁である。


「で、受けるの?」


「まぁね。町の人間と打ち解けるにはうってつけのイベントだろ? レティはどうする?」


「勿論参加するわ。危険な魔物から民を護るのは騎士の役目だから。……えっと、ライズの魔物は危険じゃないわよ」


何気に発言した後で自分の発言を恥じるレティ。そんな姿がちょっと可愛いと思うライズであった。


「そんじゃ大魔の森の魔物狩りに参加するか!」


 この時のライズは、自分が今回の魔物の大発生に多少なりとも関わっているとは露ほども気付いていなかった。

 そしてそれはライズと共に闘ってきたレティも同様であった。

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