ナックル攻略

試合は櫻井の1発が出て1対0、エンペラーズがリードしたまま中盤を迎えた。


そして打席には再び櫻井が立つ。


前の打席でホームインを打たれ慎重になっている真中は初球シンカーを投げた。

すると櫻井はセーフティバントを決めた。

打球は三塁線ギリギリに転がりサードがボールを取ったが、バントを決めたと同時に素早くダッシュした。俊足の櫻井は既に一塁ベース上だ。


動揺した真中は3番トーマスJr.を迎える。


その初球に櫻井は走った。


バッテリーは虚を突かれ、盗塁成功。


真中は櫻井一人に翻弄される形となった。


一塁が空いているが、ベンチからは勝負のサインが出た。



しかしこれが裏目に出た。


トーマスJr.はオールスター戦以降タイミングをとるために足を上げるフォームに変えていた。


(球筋さえわかれば後はハードヒットするのみだ)


トーマスJr.は真中の球の軌道をよく見る。


二球目は外角に外れるシンカーでボール。


ワンボール、ワンストライクと平行カウントになった。


三球目は内角を突くスライダー。

しかし、トーマスJr.は上手く足を上げタイミングをとった。


後は上げた足を下ろして鋭くバットを振るのみだ!

フルスイングした打球はグーンと伸び、左中間スタンドに飛び込む25号ツーランホームラン。


これでリードを3点に広げた。


トーマスJr.はこれで打点を86にし、リーグ単独トップとなる。


この3点が重くのしかかり、ガンズは完封敗けを喫した。


圧巻だったのは榊のピッチングだ。


ランナーを二塁に踏ませない堂々としたピッチングで、4番廣永を3三振に抑えた。


終わってみれば、被安打1 、2四球 12奪三振というピッチングでボボズ打線を寄せ付けなかった。


投打の主力が噛み合いエンペラーズは首位をキープ。


そしてガンズ攻略の一つでもあった、真中を打って走って揺さぶり、トーマスJr.のホームランをも呼び込んだ。



続く二戦はエンペラーズが廣澤

ガンズはベテランの阿部をもってきた。


廣澤はエンペラーズに移籍してから破竹の勢いで現在4連勝をしている。

ベテランの阿部は5勝6敗と負け越しているが、ストレートの威力は衰えていない。


試合は投手戦となり終盤に差し掛かった7回の表、エンペラーズの攻撃でガンズはピッチャーを希崎に変えた。


湧き上がる歓声に包まれ、ナックル女王こと希崎 舞がマウンドに上がる。


ガンズ攻略のもう1つ、希崎のナックルを捕らえるのがこの作戦であり、今後ガンズと戦うには有利になる作戦でもある。


投球練習が終わり、打席には6番松浦が左打席に入る。


希崎の初球は勿論ナックルだ。


外角外れてボール。



続いて二球目は同じ腕の振りで、ストレートを投げた。


松浦は見送る。


「ストライク!」


続いて三球目、これもナックル。


ユラユラと揺れながら縫い目まではっきり見える。


松浦は手元までギリギリ引き付けてスイングした。


打球はライトのモンスターウォールに激突するツーベースヒット。

今日の希崎はナックルのキレが今一つみたいだ。

とはいえ、無回転のボールだから、風や湿気で左右されることもある。

ノーアウトランナー二塁で続くバッターは曲者の中田。


一球目ナックル、二球目ストレートを見送りワンボール、ワンストライク


三球目のナックルをファール。


四球目これもファール。


五球目、カーブを投げた。


これもカットしてファール。


六球目ナックル。


またもやファール。


七球目、ストレートを投げた。


これもファール。


中田はわざとファールを打っている。


球数を多く投げさせようという作戦なのか。


こういう作戦に中田はうってつけの選手だ。

典型的な2番バッターの中田だが、高校、社会人時代4番を打っていた長距離砲だ。

プロに入ってから、周りは体格の良いバッターばかりだった。

中田を長距離砲としてプロで生き抜く事は出来ないだろうと思い、バントや右打ちという繋ぎのバッティングをファームでは徹底的に特訓した。


八球目ナックルを投げたが、ファール。


希崎に焦りが見えてきた。


捕手がタイムをかけマウンドに駆け寄る。


歩かせるかどうするか。


希崎は女性だが、向こう気の強い選手だ。


「冗談じゃない、何で歩かせなきゃなんないの?どうせファールしか打てないでしょ、あんなバッティングじゃ!」


希崎は勝負しか頭の中にない。


ベンチも勝負のサインを出した。


そして九球目、またもナックル。


そしてカットしてファール。


「何なの、アイツ!チョームカつく!」


冷静さを失った希崎。


そして十球目、ナックルを投げた。


しかし変化のないただの棒球だ。


中田は完璧はスイングで捕らえ打球は左中間上部に入るツーランホームラン。


ついに均衡を破った。


そしてナックルを攻略したのだ。


中田のホームランの後は面白いように打ちまくるエンペラーズ打線。


この回一挙5点を上げ勝負を決めた。


ベンチではヤマオカが佐久間に

「どうかなアイツは?」とガンズベンチを見て相談していた。


「どうかなぁ、ウチに来てくれればこの先かなり楽に戦えるんだが、果たして向こうさんが首を縦に振るかね?」


ヤマオカのいう【アイツ】とは?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る