正捕手への道
エンペラーズは投打とも非常にバランスの取れたてチームだ。
ではウィークポイントはどこか。
正捕手の不在である。
エンペラーズはこの数年正捕手と呼ばれる人材がおらず、二人の捕手を併用している。
とりわけ首脳陣から期待を寄せているのは、入団3年目の室田 真琴(むろた まこと)
大学時代にドラフト3位でエンペラーズに入団。
強肩と左右に打ち分けるバッティングで正捕手の期待も大きかったが、キャッチングとリード面にやや難がある。
接戦になるとそのウィークポイントは顕著にわかるほどで、ランナーが走った時、素早くスローイングを行うのだが、キャッチングがばらつき、タイミングよくアウトに出来ず、また配球の組み立てが今1つな為、信用に欠ける。
木下というベテランの捕手と併用して使われる事が多い。
木下はインサイドワークには長けているが、肩が弱く盗塁阻止率も低い。
今年のキャンプから室田はキャッチングの課題として、連日ブルペンで各投手の球を受けていた。
今年は正捕手を作り上げる事が課題とされているエンペラーズにとっては室田にかかる期待が大きく正念場でもあった。
ヤマオカ監督は室田のリード面を改善させるため、榊のピッチングを見ながら配球の組み立てを勉強するよう言われた。
球界を代表する左腕の投球術を参考にしようと榊に付いて回っている。
榊は常に一人で行動するので後ろから付いてくる室田はかなり目障りである。
「ついてくんな!何でテメーみてぇなヘボキャッチャーの面倒見なきゃなんねぇんだよ!」
「榊さん、自分、榊さんのピッチングを勉強したいっす!」
「サインはオレが出す!テメーは黙って球捕りゃいいんだ」
「そんな…」
「これ以上付きまとうなこのストーカーヤロー!」
とダッシュしてフライングニールキックをかました
「ぶほぇっ!」
モロに食らって失神した。
榊の狂暴ぶりは手を焼く。
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