騎士王とバベルの塔
ロゼマカヌラ
プロローグ
口に広がるさびた鉄の味と聞こえるのは誰かの言葉のない声だった
戦争の末端
帝国の西側国ライツ連邦との長きに渡る意味もない一方的な殺戮場に幾千の命が消えていった
元は森林であった筈の森は荒れ果て枯れた砂が覗き雨を望む大地がそこにはある
見渡す限り木々や草花など無く色の変わった砂漠に血塗られた戦果の煙が立ち込めている
(今何人やった……)
今更そんなことを考える。
自分が貫いた剣にはもう輝かしい光もなく赤い血で塗られている
数メートルにも及ぶ幾千もの死体が積み上がった丘の上
死体の山を書き分けるように探している成人がいた
「マリー、ユガネ、皆、皆」
死体を書き分け
「死者の弔いをしても貴様は死ぬぞ」
「俺らが……何をした俺たちはただ幸せになりたかっただけなのに!!!俺らは何もしてない何もいらない、ただ家族との平和が、子供たちとの成長を見たいだけの思いもお前らにはわからないのか!!」
「知らんな」
件を抜き首を刎ねる
まだ若いと言うという相手を殺すのは少しいたたまれない
ズルりとすれ違うように倒れた敵を横目に
失った仲間の体と切り捨てた敵の上で自身の行いに目を向けた
見るに堪えない光景と罅割れた断末魔が鳴っている
誰も救えずに傷付いた者は捨て置いていく
これが戦争、すべては正義のための行為
全ては我が帝国の未来の為に繁栄と象徴を見せしめる最強たる武力を誰を逆らえぬと。
それだけなのだ
たったそれだけの見せしめの戦争とも言えるだろう
西側諸国に多額の税金に加え、スラム街に変わっていく国を嘲笑い
数十人という権力者を裏切り者とし殺害し国々にとって貴重である魔術師を魔女狩りにかけた
これを機に帝国に向いた刃にを正当防衛と主張し、戦争が起こった
理由はなんてものは後から着いてくる
たったこれだけの価値で国ひとつを奪ってしまうそれが惨劇だった
いつの夜も帝国の勝利のためと人を殺した分だけ騎士は讃えられる
それを後から生まれる恨みの代償に誉と受け取るのが正義だと掲げ
帝国の繁栄のためと勝利のためと人を殺し続けるのが正義なら
何が不義なのだろうか
誰かを守る為でもなく自身を守る盾にもなれないまま僕は何故騎士に成り果てたのか
その答えは虚しくも信じていたからなのだろう信じた結果がこれなのだ
こんなものの為に騎士になったのかと
少年ヨハネは若干12歳で剣を枯渇した地面に突き立てた
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