第13話 曲をつくろう


 色々できるようになってくると、誰かの曲を唄うだけじゃ満足できなくなってくる。

 いつもの病気なわけだが。


 よし、曲を作ろう。


 というわけで、曲を作ることにした。


 社会人になってから、結婚式とカラオケくらいでしか唄っていなかったというのに、ギターを始めてからというもの、音楽が加速している。

 いいのか、まだ楽器始めて数年しか経っていなくて、普通かそれ以下くらいの腕前だというのに、作曲なんかして…。

 いいに決まっている。

 Grace VanderWaalは11歳でウクレレを独学で始めて、その半年後には作曲していて、12歳でシンガーソングライターとしてデビューしているぞ。

 いや、子供の吸収力や応用力はオッサンにはないから無理じゃね?

 いやいや、オッサンには四十年以上音楽を聴いて、唄ってきたキャリアがある。その感覚がある。

 まあ、あんな天才と自分を並べて考えはしないけれども、昔からセッションではスキャットしていたのだから、メロディ作るくらいはできるはずだ。


 まずはやってみて、色々と問題点を明らかにしていこう。

 問題点がわかれば、解決できるはずだ。


 さて、曲ということは、何か伝えたいこととか、テーマが必要となってくる。

 曲調も詩も決まらない。


 テーマはあっさりと決定した。

 飲んでいる時に、そんな話をしていたところ、そのバーのテーマ曲的(テーマ曲ではない)なイメージでやってみることに。


 よし、ファンクだ。

 曲調もあっさり決定。


 あれ?

 ファンクといえば、ブラスが鳴ってほしいし、パーカッションも欲しい。

 ギターで作曲?

 む…。


 そこで今回は秘密兵器を導入した。


 秘密兵器の名は…「Garage Band」である。


 初めて買った初代iPadちゃんに突っ込んでいたアプリで、現行で使っているiPad air2にも当然のように突っ込んである。

 ブラスの音源は内蔵していないので、欲しい音が決まったら、いつもセッションしている鍵盤の若者にデータでもらえるようにお願いした。


 さあ、作曲作業だ。


 今回は1コードで曲を作る。これでコード進行は感がなくていい。

 コードはC7。

 リズムは適当にまずは110(一分間に110拍)とした。

 基本となるビートをループ音源から持ってきてループさせる。

 更にベースラインもループ音源から引っ張ってくる。これはスラップやらいくつかの音源を切り貼りして、オリジナルのベースリフを作った。

 これで大雑把なノリができるので、ギターを繋いでカッティングを裏拍でのせていく。

 編曲はあとでやるとして、とにかくここにスキャットでメロディを吹き込むのだが、どの部分がどう使えるかわからないので、とにかく色々なヴァージョンで重ねていく。

 それにしても自室で唄っているので、大きな声が出せない。

 後々、スタジオ録りをすることを前提に、とにかくデモを作ることとする。

 問題発生。

 歌詞…。


 歌詞を書く上で、一番障害となるのは照れだった(僕の場合)。

 いい歳こいたオッサンにはなかなか厳しい壁だった。


 ええ、書きましたとも。

 ノートとスマホ持って、ドトールで一気に書き上げましたよ。

 しかも英語ですぜ、英語!

 そのまま、書き上げた歌詞を持ってバーへ。

 セッション仲間の若者たちやら、お店のスタッフやオーナーに見せて、感想を頂いてゴーサイン。


 唄うこと数十テイク。

 やっと詩とメロディがシンクロした。


 コーラス重ねて、ブラスと鍵盤をお願いして、ギター録りなおしながらアレンジして、ベースラインもサビ部分は変えて、ドラムのオカズ入れて、パーカッション入れて、やっと完成。

 と、思いきや、お店で聴いてみたら何かちょっとテンポ遅いよねってなって、店舗を125まで上げて、ヴォーカルとコーラスとギター全部録りなおして…。


 今度こそ、デモが完成。


 三か月半掛かったけど、たまらなく楽しい作業だった。

 こりゃ嵌った。


 因みに、去年の大晦日にそのバーでお披露目の演奏をすることができた。

 もうね、ホント楽しかった。

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