第9話 性善説と性悪説

 人間は本来、善であるのか。人間は本来、悪であるのか。これを性善説と性悪説といいます。中国の諸子百家の孟子と荀子の書物に出てくることです。

 みなさんはどちらだと思いますか?

 ぼくは若い頃は性善説を信じていましたが、歳をとってからは、やはり、法律や警察で取り締まらないと悪いことをする、嫌なことをする人たちが大勢いるため、性悪説に変わりつつあります。

 そこで、聞いてみたいことがあります。

 性善説を信じる人は、生まれながらに善であった人間がなぜ、いかにして悪に手を染めると思いますか?

 性悪説を信じる人にも聞いてみたいです。世の中に優しい人はいます。生まれながらに悪であった人間がなぜ、いかにして善なる行為を行うようになるのでしょうか。

 何が原因なのでしょう。もちろん、現在解明されてません。

 人間の知能の五割は遺伝に由来するといわれてますが、残り五割は教育や環境に由来します。おそらく、本当は、人間には善なる心も悪なる心も両方合わせ持って生まれてくるおでしょう。

 この人間を包み込む環境の中で、世界のどこに人を善たらしめる要素があるのか。世界のどこに人を悪たらしめる要素があるのか。ぼくはとても気になります。

 ピンカーの「暴力の人類史」によると、人類の社会で暴力は時代が新しくなるごとに減っているそうです。かつて、十八世紀までのヨーロッパの君主は、八人に一人は殺されました。王様に生まれたからといって幸せになれるわけではないのです。

 いったい世界の何が原因で人間を善になさしめたり、悪になさしめたりするのでしょうか。ちょっと考えてみてほしいと思います。

 神や天使や悪魔が原因で人間が善になったり悪になったりするというのはいくらなんでも哲学者のとるべき態度ではありません。しかし、この世界のどこかにそういう要素が存在しているのは確かなはずです。

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