第28話 突然の告白は戸惑うだけだ。

「間戸宮さんが何でここに?」

 僕が問いかけるも、制服姿の麻耶香は顔を上げようとせず、黙ったままだった。僕と同じ学校の鞄を持っているところから、同じ学校帰りらしい。

 どうしようか。

 リタの「近くに誰かいるから」という「誰か」は、間違いなく麻耶香だ。けど、いたところで、なぜ、リタが教えてくれたのだろうか。麻耶香はたまたま、僕の近くにいただけかもしれない。電柱に隠れていたのも、何か理由があるかもしれない。

「か、川之江くん」

「何?」

「こ、このことは、誰にも言わないでください」

「言わないでって、他の人に知られたら、まずいこと?」

「まずいことです。特にわたしにとっては……」

「そうなんだ」

 僕が口にすると、麻耶香はようやく顔を上げてくれた。

「何も、思わないんですか?」

「思うって、何が?」

「その、わたしのことを変な人だとか……」

「まあ、何で、僕から見つからないように、電柱に隠れていたのかは気になるけど」

 僕がおもむろに声をこぼすと、麻耶香は視線を逸らした。

「別に、その、間戸宮くんのことが好きだから、毎日つきまとっていたとか、そういうことはしてないです」

「それって、完全にストーカーっぽい気がするけど……」

「今のは、あくまで、わたしがやってないことの例です」

 麻耶香の口調はぎこちなかった。僕に対して、隠し事をしているような感じだ。

「もしかして、僕を見張っていたとか?」

「み、見張ってたなんて、そんなことしてないです」

 麻耶香はかぶりを振った。

 わからない。

 僕は麻耶香がなぜ、電柱に隠れていたのか、知りたい。死神のリタがわざわざ、いることを教えてくれたくらいだ。何かあるのかもしれない。

「間戸宮さんって、妹さんとか、いたっけ?」

「い、います」

「その、妹さんから、何か聞いてない?」

「というのは?」

「いや、何となく聞いてみただけなんだけど……」

 口にする僕は、もしかしたら、明日香絡みのことじゃないかと思い始めていた。

 実は、明日香は今日の時点で、僕のことを殺そうとしていたのではないか。朝の校門前で出会う前からだ。

 だから、姉の麻耶香がそれに関わっていないか、探りを入れてみたというわけだ。

「間戸宮くんは、妹と面識とかありましたか?」

「多分、明日くらいには」

「明日ですか?」

「いや、何でもない。ちょっと、前に会ったことがあって……」

 僕はとっさにウソをついた。

「前にですか……」

「だから、まあ、ちょっとね」

「明日香、ですよね?」

「うん」

 僕がうなずくと、麻耶香の表情に陰りが走った。

「そうなんですか。前に明日香に会ったことがあるんですか」

「間戸宮さん?」

「明日香、そんなこと言ってなかった……」

 麻耶香の声はか細かった。

「間戸宮くんは」

 麻耶香は僕と目を合わせてきた。

「わたしと明日香、どっちがいいですか?」

「えっ? それって、どういうこと?」

「そういうことです」

 麻耶香はなぜか、僕に詰め寄ってきた。

「間戸宮くんに対する気持ちは、わたしは誰にも負けてないって思っています」

 麻耶香は制服の胸あたりを手で押さえつつ、僕に訴えかけるように言ってきた。

「僕を殺したいとかじゃないよね?」

「それは、どういう意味ですか?」

「いや、その、今、間戸宮さんが言ってることって、ほら、僕に対して、興味があるような感じだから……。でも、まさか、そんなことあるわけないし……」

「あります!」

 麻耶香は声を張り上げた。

「川之江くんは、もっと自信を持ってください。わたしみたいな、クラスでも、その、そこそこ可愛い子に迫られているんです」

「自分でそう言えるなんて、すごいね……」

「い、今のは、間戸宮くんに自信をつけさせようと言ったまでで、その、他の人には言わないでください」

 麻耶香は頬を赤らめた後、僕の方から視線を逸らした。

 後、今さら気づいたけど。

 麻耶香は僕のことが好きなようだ。

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