天誅 9

「頭がおかしい?おかしくなんてないわ!おかしいのはアンタよ!

アタシが、首を吊らなくちゃいけなくなったのも、そう仕向けたのはアンタでしょ!

首を吊った後、誰も見つけてくれず、死に掛けたのも全部アンタのせい!

こんな変な身体に改造されたのも、全部アンタのせい!りょうのせい!」



叫び声を上げながら、必死にりょうの身体を揺する。



「落ち着けって!知らねぇし」


ここまで悪事をばらしても、相変らずりょうは自分の罪を認め謝罪しようとはしない。



「謝って!アタシから全てを奪ったんだから、土下座して謝ってよ!!」


「なんで俺が、謝らなくちゃならないんだ」


身体を揺すっているアタシの両手を、りょうは掴むと押さえつけてきた。

そうやって、都合が悪くなると、力で押さえつけるんだ。

救いようがない最低男。



「アタシは悪くない!何もしてないのに!」


「はぁ?もういいから黙れよ」


「なんでこんな目に合わなくちゃいけないの?嘘ついたらダメ?

皆ついてるじゃない!嘘をつかない人間なんて居ない!」


「嘘付くくらいが、お前らしいよ」


「皆嘘をついて、人を利用する。そしてのし上がる!それが人間じゃない!」


「あぁ~、はいはいわかったって。完全にハイになってるな・・・・どうしたモンか」


「アタシにはわかってるのよ!仕返ししたかったんでしょ?自分が悔しい思いをしたから」


「仕返し?また戯言が始まったか」




「お父さんのあの言葉、気にしてるんでしょ!」



「父さん・・・・・?」



今までアタシの言葉を聞き流していたりょうが、突然ピタリと止まる。

どうやら、図星みたいね。

話を続けた。



「この前の街で会った校長。アレ、アンタのお父さんだったんでしょ?

お父さんの方は最後まで気づかなかったみたいだけど。


おかしいと思ったわ。

関係ない話をダラダラ始めちゃってさ、根暗で面白みのないアンタが無理しちゃって。

まぁ、そんな他愛のない話をしてるのに、お父さんは気づかないまま相槌打ってるだけだったけど。

それにしても、アレよね~。

実の父親に気づいてもらえないって、どんなに惨めな気持ちなんだろう。


そして最後の最後でやっと気づいてもらえたっていうのに、父親から出た言葉は、

気づかなくてすまなかった じゃなくて、

忘れたのはわざとじゃない!謝るから殺さないでくれ だなんてね。

笑える。

所詮実の親にとって、アンタはそんなモンなのよ!

その腹いせに、アタシに嫌がらせしたんでしょ?

アタシにも同じ目に合わそうとして!

アンタはいつもそう!最低で最悪な男!

ゆるさな・・・・・」



順調にりょうの悪事をバラしていたというのに、突然衝撃が走ったと思うと、目の前が暗くなり意識は途絶えた。

どうしたちゃったんだろ、アタシ。


わかんない。

全然わかんないよ。

自分の身体なのに。



目を開けると、身体中に激痛が走った。


右手が痛い。

左わき腹が痛い。

頭が痛い。


痛みに耐え必死に目を開ける。

そこは見た事がない場所で、目の前にはたくさんの人間が立ち、アタシの事を見下ろしていた。



「目が覚めたか、クズ」


上の方から声が聞こえる。

聞いた事がある声。

誰だったっけ?

あまりの激痛で思い出せない。



「・・・そんな事より、痛くて動けないの。誰かりょうか係員を呼んできて。

食べ物を食べれば少しは楽になるから・・・・」


このままじゃ、エネルギーを使いきり、アタシは死んでしまう。

だから、一刻も早くなんとかしなくちゃならないの。



「・・・私ならここに居ますよ。

そんな姿になってまで、貴方はまだ生き延びようとするのですね・・・滑稽な」



あぁ、わかった。

上から聞こえた声は係員の声だ。

え?係員がなんで上に居るの?

そういえばあいつ、アタシの事をクズって言った?

立場をわきまえなさいよ!



「誰に向かって罵声を吐いてんのよ!アタシを誰だと思ってんの?・・・殺すわよ。

冗談なんて言っていないで、早く食べ物を持って来なさいよ!」


イライラしていた。

アタシが苦しんでいるっていうのに、何もせずただ見下ろしているだけの、ただの人間であり無能なアイツの事を。



「お前だよ、ミカ。お前に向かって話してるんだ。

食べ物をくれだって?お前に食わせる物なんて1つもない」


それなのに、空気が読めないのか?アイツは相変らず、罵声を飛ばしてくる。

もう遊びは終わりにしてよ!冗談じゃなくて、本気で辛いんだから!

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