ミカ 14
翌朝、目が覚めると、顔や手にパリパリとした違和感。
床の上に無造作に転がる自分の身体を、ゆっくり両手で起している時、
「あっ!」
何かを思い出したアタシは、飛び起きると急いで浴室の鏡の前へと走っていった。
鏡に映ったのは、全身返り血だらけの自分の姿。
・・・・しまった!
昨日、たくさん人を殺した後、
血を洗い流さず、この状態でフロントの前を通過しちゃった!
あまりの出来事に、呆然と鏡の前で立ち尽くす事数分。
「・・・やっちゃった」
現実に戻ると、制服を脱ぎ、熱いシャワーを頭から浴びる。
・・・・流石にこれはマズイわね。
1日目は、着替えを持っていって誤魔化したのに、昨日はこの状態をフロントの人間に見られている。
まぁ、遺体が見つかれば疑われる事はわかってるんだけど、それは 見つかったら の話で、
まさか自分からボロを出しちゃうなんて。
もう涼の耳に届いているかしら?
30分程時間をかけ、丁寧に血痕を洗い流した後、制服の血も綺麗に洗い流す。
昨日、一応アタシは1人も人間を殺していない事になっているからね。
血がついていたらおかしいでしょ?
洗い終わった制服を浴室にかけると、私服に着替え、朝食を食べる為、レストランへと入った。
室内には、一緒のテーブルで会話をしながら朝食を食べる、涼と係員の姿が見える。
ヤバ!
係員の奴、もしかして昨日の事、チクってる?
一人分の朝食をトレーに乗せると、盗み聞きをする為、2人の近くへと座る。
すると、
「おはよう、ミカ」
涼の方から、いつもと変わらない朝の挨拶をされる。
それにつられ、
「おはようございます。ミカさん」
係員も気持ち悪い笑顔でこちらを見た。
「お、おはよう・・・」
後ろめたい事があるアタシは、思わず挨拶を噛んでしまう。
しかし、そんなアタシの言動に突っ込みを入れる事なく、挨拶が終わると2人は視線を戻し、何やら会話の続きをし始めた。
どうやら、挨拶を普通に交わした所を見ると、まだ昨日の殺害数の報告を聞いていないみたい。
アタシは耳に意識を集中し、2人の会話を盗み聞きし続ける。
「・・・今日の予定は、高校を2つ・・・」
「上手くいけば、1週間でこの地を去ることになります・・・」
よし!このまま終われ!余計な事は喋るな!
係員の1語1句に反応し続ける。
大体、毎日昨日の殺害数なんて聞いてどうする訳?
一応、アタシは涼に監視されているっていう状態なんだから、聞く必要だってないじゃない!
と、怒りを感じていると、
「で、最後に昨日の殺害数なのですが・・・・」
一番恐れていた話題が出された。
アタシは思わず、持っていたフォークの手を止まる。
昨日1日で、アタシが殺した人間の数は50を超えている。
2つの学校と、夜中の繁華街。
ヤバイ!・・・・いよいよ、バレちゃう!・・・・・。
ドキドキしていると、
「5名です。今日も、止む負えない理由がない限り、モンスターのみの討伐を心がけましょう。では」
報告を終えると、係員はトレーを持ち、席を立った。
涼は、当たり前という顔をして、淡々と食べ続けている。
しかし、アタシだけはその言葉を素直に受け入れる事が出来なかった。
死んだ人間の数が、5名?嘘よ・・・・、有り得ない。
係員が放った言葉に思わず、
「えっ?」
声をあげてしまう。
すると、それが聞こえたのだろう、係員はニヤっと笑いながらこちらを見ると、
「おや、どうかしましたか?ミカさん」
アタシの横で立ち止まった。
え?すぐに、ハッ!と我に戻ると、
「何でもないわよ!ポテトが喉につまったの!」
そう言うと係員を睨み付け、お皿に盛り付けたポテトサラダをいっきに口の中に押し込んだ。
「そうですか。喉の詰らせると危ないですから、落ち着いて食べて下さいね」
係員は、不気味にニッコリ笑うと、出入り口の方向へと歩いていく。
奴が完全に出て行ったのを確認すると、グラスの中に入っている水をいっきに飲み込む。
「ふーーーー、危なかった」
口の中に入っていた物を全て飲み込んだ後、ようやくアタシは落ち着くことが出来た。
昨日の死者が5名ってどういう事?
なんで、アタシが殺した人間の数は、カウントされていないの?
あれが、バレていないなんて不自然すぎる。
これは、何かの罠とか?
もし罠だとしたら、何の為に?
残りの食材を口の中に放り込むと、トレーをテーブルの上に放置したまま急いでレストランを後にした。
ある物を確認する為に。
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