ミカ 11

「校長!生徒達が勝手に帰宅するとは、どういう事ですか!」


さっきまで、ご機嫌でお喋りしていたのに、突然に怒り出す。

自分から、ベラベラ喋っといて、自分勝手な奴だ。

そんな涼の態度に振り回された校長は、



「いえ!あの、大丈夫です!対象の生徒は、その残してありますから!」


アタフタとうろたえながら椅子から立ち上がると、一人で勝手に扉の前へ進む。

何勝手に、歩いてんのよ!ったく。まだ指示出してないじゃない。

そんな校長の行動に、半ば呆れながら出されたコーヒーカップに手を伸ばした時、



「そうですね、もういい時間ですし、行きましょうか」


そう言うと、涼も立ち上がり、扉の方へと歩いていく。


え?何?討伐しちゃう訳?

いつもなら、勝手な行動をした校長を怒る癖に、今日は怒らないとか珍しい!

まぁ、こんな時間まで押したのも、アイツがベラベラ喋ったからなんだけど。

あ、そっか!だから、今回の校長には甘いのね。



「何?行くのね。一口コーヒーを飲もうと思ったのに」


急いでコーヒーを一口飲むと、アタシも立ち上がり、扉の方へと小走りに走っていく。

すると、涼はこちらへ左手を伸ばすと



「いや、今日はいい。時間も時間だから俺が行く。

お前は、ここで待機するように」


自分の言いたい事だけを言い終ると、アタシの返事を聞く前にドアノブへと手を伸ばす。

え?どういう事?約束と違うじゃない!楽しみにしていたのに!

数時間、人を殺す事だけを楽しみにしていたアタシにしてみたら、突然奈落の底へ落とされた感覚。

たった一言で、終わらせるなんて出来ない自体に、

焦ったアタシは、駆け寄り涼の腕を掴むと、



「ちょっと!車の中での話と違う!次はアタシが殺すって約束したじゃない!」


ヒステリックに声を上げた。


ダメ!絶対に無理!

今回人を殺せるって思ったから、パンを食べるのを止めたのに・・・・。

このままじゃ・・・・このままじゃ・・・・またあの痛みが襲い掛かってくる!

とても落ち着いてなんて、いられなかった。



しかし、涼はそんなアタシの事を睨みつけると、


「リーダーは俺だ。俺に従え!

お前はそんな態度を取るから、討伐なんて任せられないんだよ。

大人しくまってろ」


力任せに吹っ飛ばし、校長と共に客室から出て行った。

室内には、ドサっと床に転がるアタシだけが残る。



「・・・痛い・・・・」


床に叩き付けられた衝撃で、お尻と太ももに痛みが走る。

きっと痣になっているは、

しかし、右手に走るのは、これより何十倍も重たい物。

それがアタシに降りかかってくる。


痛い・・・痛い・・・・痛いのは嫌・・・。

カウントダウンが始まる。



ドクドクドク・・・・。


心拍数が上がっていくのがわかる。

・・・・・・・・・・・痛いのが怖い!



「いやぁああああああああああああっ!」


アタシは思いっきり叫ぶと、左手にカギ鉄鋼を召喚する。

殺さなくちゃ!早く!誰でもいい!

じゃないと、あの痛みが襲ってくる!


カギ鉄鋼を数秒眺めたのち、急いで客室から出た。


客室から出ると、


「おや、ミカさん。トイレに行くのですか?」


係員の声が聞こえてきた。

なんでまた居るのよ!・・・と言いたくなったけれど、今はこいつに構っている暇はない。

一刻も早く、誰かを殺さないと!



「そうよ!漏れそうなの!」


アタシはそう叫ぶと、人が居そうな場所へと走っていく。



「そうですか。カギ鉄鋼を出したまま、トイレに行くのですね・・・ホホホ・・・・」


不気味な笑い声が廊下に響いていたけど、アタシの耳には入らず、右から左へと流れていく。

早くしないと・・・・怖い!



人が居そうな場所って何処だろう?

生徒達がパラパラと下校する所を目撃した今。

ある程度の人間が集まりそうな場所は・・・・・体育館。

体育館なら、そこでやる部活なんて限られているだろうし、出入り口を塞いでしまえば逃げる事も出来なくなる。

そして、あの場所なら、多少の悲鳴が上がったとしても、校舎まで声がハッキリは届かないはず。


・・・・・決めた。



しかし、どうやって出入り口を塞ごうか?

鍵なんて持っていないし、今からバリケードを運ぶなんて時間が勿体無い。

バリケードになりそうな物でもいい。

手軽に使える物はないだろうか?・・・・・あるじゃない、効果的な物が。


視界に入ったのは、同じジャージの上下を着た数名の男女。

部活を始める前に、念入りに準備運動をしている様子。

アタシは左手を背中に隠しながら、無言でそいつらの傍まで寄る。

近づいていくにつれて、怪訝な顔をした生徒も居たけれど、全体的に無抵抗だった。



「・・・いい子ちゃんで安心したわ」


小声で呟くと、間髪居れず、そこに居た人間全ての喉を掻き切った。

悲鳴を上げる暇なく、全員その場に倒れていく。

ゆっくり休んでいる暇はない。

手早く全員が息絶えるまで切り裂くと、その遺体を体育館の出入り口へと積み上げた。



バリケードになりそうな物。

それは、さっきまで生きていた人間の事だ。


突然の出来事を目の当たりにし、逃げようとした時、目の前に遺体が積み上げられてるとしたら。

大人ならそれを跨いで逃げるかもしれない。

でも今回は相手がまだ小学生の子供。


遺体を踏みつけ、逃げるなんて選択肢、浮かばないだろう。

人間バリケードを完成させたアタシは、また室内へと戻る。

そしてゆっくり体育館へと歩いていく。



獲物はすぐ目の前。

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