消せない傷跡 9

剣をカナコの顔の前にかざす。


「イジメた本人は、お前なのか?」



すると、大人しい顔から一変し、顔を歪ませながら、


「あぁ~、バレちゃった。だったら、何?悪い?」


ニヤリと笑い始める。

さっきまでの、大人しくブルブル震えていた彼女とはまるで別人だ。



「随分余裕な雰囲気だな。

自分の嘘がバレたというのに。

俺達を欺いて、楽に死ねると思ったのか?」


俺がバカだった。

あんな資料、信じる方が間違いだったんだ。

人間なんて、自分が一番大切。

自分の命を守る為だったら、平気で嘘をつく。


自分の身を守りたいが為に、サヤとヒトミ、カナコの3人は口裏を合わせたのだろう。

それを見抜けなかった担任の先生も、死刑で決まりだ。



ここまで言ったんだ。

カナコは怯え、命乞いをするに違いない。

そう思っていたのに、


「フフ・・・、あぁ~期待ハズレ。

死刑執行人って言うから、もっとカッコよくて凄い人が来ると思ってたのになぁーーーーー!」


笑ったと思うと、口を尖らせスネ始める。

その姿は、まさにダダを捏ねる子供そのものだ。



「カッコいい?・・・・何言ってるんだよぉっ・・・・」


突然表れたカナコの子供の部分に、俺は少し動揺する。

怖い!目の前に居る、小6の小娘に対し、俺は恐怖心を抱いていた。



「だって、うちらが言った嘘を疑う事なくまんまと信じて、マキの足を斬っちゃうんだよ?

ぷっ!思ったよりもバカでガッカリ~」


次は、小憎らしい顔でニヤつく。

死を目の当たりにしとて、こんな態度を取るマキが怖い怖い怖い怖い!



「これには、理由があってぇ・・・・!」


「理由って何?オッサン達が、勝手にうちらの言葉を信じて勘違いしたんでしょ?

あ~!!いけないんだー!いけないんだー!人殺しは、犯罪なんだー!」


俺を指差し、ずっと「いけないんだー」を連呼するカナコ。


いけない?

俺は悪い事をした?

それは何?

マキの両足を斬ってしまった事?

でも、それは騙されたから・・・。

騙された方も、信じず疑わなかった罪がある。

なら、俺は罪人?

嘘だ。

だって、俺は英雄になるのだから。

やめろよ。

汚すな。

俺の事を・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!



「うわあああああああああああああああっ!!!!」


大きな声で叫びながら、何度もカナコを剣で刺す。

もしかしたら、カナコは悲鳴を上げていたのかも知れない。

でも、それは聞こえなかった。

自分の声でかき消されていたから。


頭の中のモヤモヤを、早く消したかった。

だから、一刻も早く殺したかったんだ。

俺を汚したこの女を。

俺に汚点を残したこの女を。

他人をイジメときながら、その責任を他人に擦り付けるこの女を。





カナコの原型がなくなった頃、俺は剣を振る手を止めた。

マキとマリアの方を見ると、相変らず二人は見つめ合ったままだった。

会話をする事もなく、お互いが見詰め合っているのは不思議な絵だったけれど、

会話なんてなくても、お互い意思交換が出来るのだろう。


しばらく静寂が訪れ、それを破ったのは、マキだった。



「膝枕、ありがとう。もう大丈夫よ。次は私の番ね」


意味深な言葉。

それを聞いたマリアは、



「何を言ってるの?貴女は助けるからっ」


自分の頬に当ててある、マキの右手を力強く握り締める。

しかし、マキは覚悟を決めていたみたいで、



「・・ううん、もうそろそろ限界。早く楽にしてほしい」


そう言うと、マキは苦痛に顔を歪み始める。

両足を斬られ、右肩に怪我を負いながらも、今まで悲鳴一つ上げない事が奇跡だった。

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