植え付けられる恐怖 6
「映像は、映像です。
皆さんが人を無残に殺していく様を、カメラに無事に収める事が出来ました。
これを国民に見せれば、もっと我々は動きやすくなりますよ」
目の前に転がるモンスターの頭を、まるで小石を蹴るみたいに、係員はコンコン蹴っている。
薄ら笑いを浮かべながら、蹴る姿がとても不気味で気持ち悪い。
「それは、脅すという事ですよね?」
「まぁ、一言で表すならそうなりますか」
恐怖で世界を支配するって奴か。
そこだけを聞いたら、最低な話だ。
独裁者が、自分の思い描いた国を造る為に、恐怖で国民を支配するという事なのだから。
でも、俺達がやろうとしている事は違う。
女王様は約束してくれた。
心優しい人間が、安心して暮らせる国を造る、と。
そして俺達は、その為に造られた存在である、と。
「悪くないですね。それで俺達が住みやすい世界を作れるなら。犠牲も必要です」
俺も、薄ら笑いを浮かべた。
「そうでなのです。犠牲・・・・捨て駒も必要なのですよ。
新世界を作るにはね。
たくさん人を殺して疲れたでしょう?
車を手配しますので、少々お待ち下さい」
係員は、軽く頭を下げると、どこかへ歩いていった。
車を呼びに行ったのだろう。
俺達も帰る準備をしないと!
「ミカ!ハヤト!そろそろホテルに戻るから、こっちへ帰ってこい!」
遠くで、まだ息絶えたモンスターを切り刻んでいるミカに声をかける。
すると、乱暴にモンスターを蹴り飛ばすと、トボトボ歩いてきた。
ガサツな女だ。
ミカは見つかったけど、ハヤトの姿は何処にも見当たらない。
つーかあいつ、何処に行ったんだよ!
いつもモンスター討伐となると、存在が空気になる。
このチーム一番の役立たずだ!
「ハヤト!おーい!ハヤト!何処にいるー!」
何度も大きな声でハヤトの名前を叫んだ。
しかし、ハヤトからの返事はない。
っ!一番の役立たずの癖に、帰る時まで足を引っ張るとかなんなんだよ!
イライラする。
あいつはいつもそうだ。
綺麗事を並べるだけ並べて、自分は何も行動しようとはしない。
口だけの、偽善者。
「全く、勝手に何処行ったんだよ!モンスターもロクに討伐しない癖に!」
イライラを押えきれず、ついすぐ傍にあったモンスターの頭を軽く蹴った。
しかし、それじゃあ気分を抑える事が出来ず、ボンボンと別のモンスターの頭も蹴り付ける。
「いっつもいっつも、汚い仕事は全部俺に押し付け、自分はいい所を持っていく!
いつもそうだ!いつだってそうだ!
俺はいつもそんな役回り!!
どうしてだよ!なんでだよ!
俺だって・・・・、俺だって・・・・もっと・・・もっと・・・・」
認 め ら れ た い 。
すると、
「・・・・私、どんな理由であれ、恐怖で支配する世界は嫌いよ。
それじゃあ、施設に居た頃と同じじゃない・・・・。
あんな気持ちを、皆に与えるなんて・・・・そんなの・・・嫌・・・」
後ろでマリアの声が聞こえた気がした。
モンスターを蹴る音でよく聞こえなかったから、
「え?どうしたの?」
振り返り、もう一度聞き返すが、
「・・・・・」
返事はなかった。
気のせいか。
マリアは両手でしっかりアリスを抱えると、虚ろな目で地面を見つめている。
どうやら、今日の出来事が疲れてしまったみたいだ。
丁度よく、係員が薄ら笑いを浮かべながら、
「車の準備が整いました。皆さんこちらへ」
こちらへやってきた。
ミカもタイミングよく、無事こちらへ到着。
しかし、ハヤトの姿はまだなかった。
・・・・・・もうムカついた。
「もう、ハヤトの事は置いて、俺達だけで戻ろう」
ズカズカ車へと歩いていく。
居ない役立たずなんて、もうどうでもいい。
ホテルへは、自力で戻って来いよ。
俺達3人を車に乗せると、ゆっくりホテルへ向かって動き始めた。
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