第115話人とモンスター14

「ははっ・・・・」


乾いた笑い声を発しながら、ゆっくりと立ち上がる。

兄の方を向いている母は、その事に気づいていない。



「やっと近所に自慢出来る息子になったかと思えば、私の勘違いだったわ!

こんな事になるなら、ホテルまで迎えに行くんじゃなかった。


お兄ちゃん痛いでしょ?大丈夫?

あ!そうだ!救急車呼ぶんだった!

ちょっと待っててね、今電話してくるから」


兄の肩から手を離すと、母は立ち上がりこちらを振り向いた。

立ち上がっている俺と、目が合う。

相変らず、ゴミを見る目だ。



「何ボーっと突っ立ってるの!邪魔だから、どけなさいよ!」


俺の身体を、軽く突き飛ばすと、母はスタスタ階段の方へと歩いていく。

標的を見失ってしまう。


待て・・・・・よ・・・・・。

何処に逃げる気だ・・・・・?

逃がさない・・・・。

罪を償え!・・・・・罪人。



母の後を追いかけると、左腕を力強く引っ張った。

引っ張られた事により、バランスを崩した母は、大きくこちらへよろめく。



「痛いじゃない!何してるの!忙しいんだから!アンタに構ってる暇はないのよ!」


鋭い目でモンスターはこちらを見ると、大きな声で暴言を吐く。

反省するそぶりもなければ、自分が有害であるという自覚すらないなんて末期の状態。

1分でも早く、討伐しなくちゃ、犠牲者が増える前に・・・・・!




「黙れよ、モンスター」


そう呟くと、剣を取り出す。

母の口から首にかけて、串刺しにした。

もう2度と、声が出ないように、これ以上俺が傷つかないように。



剣を抜くと、母は口から血を思いっきり吹き出した。

そして、その場に崩れ落ち、もがく。

声を潰したつもりが、言葉にならない声で呻くその姿が、あまりにも醜くて、




「さよなら、大嫌いだったよ」


首に数回剣を突き刺した。

ピクピク動いているから、多分まだ生きてる。

完全に死んだ事は確認出来ていないけど、放置しておこう。

そのうち死ぬだろうから。



それより・・・・・。

まだ、片付けなくてはならない 物 がある。



兄の方向を振り返ると、

右手を抱えながら、声を発する事もなく、ガタガタ震えている物と目が合った。



「次はお前の番だ」


ゆっくり、そちらの方へと歩いていく。

ポタポタと、母を斬った時についた血を、垂れ流しながら。


もう許さない。

手加減もしない。

ここで討伐しなくちゃ、また俺が、傷つく事になるから。



兄の前で立ち止まると、剣を振り上げる。



「お前はもう生きる価値なんてない、殺す」


「・・・・・・」


兄はこちらを見たまま、声を発しようとしない。



「どうした?命乞いしないのかよ」


「・・・・・・」


セコイ兄の事だ。

きっと、「死にたくない!自分だけは助けて欲しい!」と泣いて頼みこむはず。



「くっ・・・くくっ・・・・」


そんな姿を思い浮かべると、笑いが止まらなかった。

しかし、



「・・・・・・」


兄は黙ってこちらを見たまま、喋ろうとしない。



「殺すよ?俺、本気だから!いいの?ほらよっ!」


剣を振り下ろし、頭のギリギリの所で寸止めする。

きっとビビって漏らすんだろう!・・・・そう思っていたのに、



「・・・・・・」


全く動じる事なく、ただこちらを見ているだけだった。

もしかしてこいつ、この状況下でまだ俺の事を舐めているのか?



「どうした?もしかして、俺が殺さないとでも思ってる?

本気だ!俺はいつでも、お前を殺す事が出来るんだ!ほら!ほら!」


何度も、剣を振り上げては、兄の頭の上で寸止めする。

しかし兄は、逃げようともしなければ、視線を外そうともしない。

そんなこいつの態度に、イラついた俺は、



「舐めてんじゃねーよ!前の俺と一緒だと思うな!」


剣で額を軽く切った。

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