第98話過去との決別 6



「・・・・久しぶりだな・・・・」


とある教室の扉の前にたどり着いた。

1年3組、俺がこの学校に在籍していた頃、毎日通っていた所。

忌々しい記憶を産み出した諸悪の根源となった場所だ。



そっと、扉に耳を当てると、


「・・・・足音が聞こえる」

「・・・・なんか声が聞こえなかったか?」

「・・・・しっ!静かにしろ、見つかるだろ」


中から、コソコソと喋り声が聞こえてきた。

気持ち悪いあの声。

耳に付く、この喋り方をするのは・・・・・・・・あいつらだ。



逃げないよう、2つあるうちの一つの扉の前に、隣の教室から運んできた机と椅子を積み上げる。

それを奴らに気づかれないよう、音を立てずに。


バリケードを作り終えた後、中の様子を探る為、再び扉に耳を当てると、


「・・・・・なんか、廊下から音が聞こえない?」

「・・・・・気のせいだろ」

「・・・・・きっと、俺達と同じく逃げてきた奴らだ」


どうやら、気づいては居ない様子。

フッ、バカな奴ら。

この学校で一番重大な罪を犯しといて、コソコソ隠れるなんて、どうしようもないクズだ!!

処刑してやる!!!!

嫌な思い出と共に、お前等をこの世界から処刑するんだ!!



バンッ!


勢いよく、バリケードを張っていない方の扉を開いた。



「・・・・・・ヒっ!」


微かに叫び声が聞こえた。

この甲高い声は、デブで眼鏡をかけている志田の声だ。


さあ、何処に居る。


ザッと、室内を見渡すが、奴らの姿は見えない。

隠れる場所だって、限られているだろうに。


自分達だけは、死にたくない!


と、無駄に抵抗をする、カスめ。



「出て来い。俺だよ、俺。北条涼だ。

お前等に会いに戻ってきた。顔を見せてくれよ」


静まり返った教室内に、大きな声を出して喋る。

この学校に通っている頃は、こんなに大きな声で話す事なんて出来なかった。

あの時とは違う。

俺は変わったんだ。


誇らしげな顔で、俺は教室内を見渡す。

しかし、奴らは姿を現そうとしない。


「なんで、出てきてくれないんだ?入院していた時、手紙をくれたじゃないか!」


相変らず、静まり返った室内。

奴らから、返答はない。



「全力で守りに来た。恩を返しに来た。

それなのに、どうして出てきてくれない?」


そう、手紙に書いたのはあいつらだ。

それなのに、まだ隠れたまま、姿を現そうとはしない。


とある机の前まで歩いていくと、


ガンッ。


机を蹴った。

これは、志田の机だ。

自分の机を蹴られるなんて、短気なあいつ等の事なら、ブチ切れるに違いない!



・・・なんて、想像していたのだけれど、相変らず奴らは出てこようとしない。

なんだよ、つまんねぇの。



掃除用具入れの前まで歩く。

いつも完全に閉まっているはずの扉が、微かに開いていた。

どうせデブだから、中に隠れたは良い物の扉が閉まらなかったってオチだろ。


「いつまでかくれんぼしてるんだ。何処に居るか?バレバレだって!」


剣で勢いよく、掃除用具入れの扉をぶっ刺す。

木で出来た扉なんて、切れ味がいいこの剣にしてみたら、屁でもねぇよ。


こうすれば、扉と共に串刺しになっているはずだった。

しかし、予想していなかった事が起り・・・・、




「死ねぇえええ!!!!調子乗ってんじゃねぇぞ!!!北条!!!!」


すさまじい叫び声と共に、頭にガツンと衝撃が走る。

一瞬何が起こったのか?理解出来なかった。

だって、俺が生身の高校生なんかに負けるハズがないんだから。



振り返ると、椅子を両手に抱え、身体を震わせながら荒い呼吸をしている藤井の姿が見えた。

なんでこいつ、椅子なんて持ってんの?

なんで、ブルブル震えてねぇの?

俺の事が怖くねぇの?


色んな思いが頭を駆け巡る。


え?・・・・・もしかして、俺、こいつに殴られた?



あまりの衝撃によろけ、その場に跪く。

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